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第4話 新たな関係
「優、そっちもうちょい上げてー。よし! 養生テープで仮留めなー」
「あいあい、キャプテーン!」
「ドライバーくれや。おまえはそっち側頼む」
「あいあい、キャプテーン!」
「それなんのキャラクターよ……?」
週末、武林に手伝ってもらいながら、カーテンレールを2人で取り付けた。
カーテンレールがないと内覧時に言われた時は非常に驚いた。
「なんでだよ! どうやってガードするんのさー! って本気で驚いたよ。湯上りマッパが外から丸見えになっちゃうって……」
佐野から聞いた武林も目を見開いて驚いていた。
「せめて腰にタオル巻けよ! 下手したら通報されるぞ? でも、聞いたことあるわ。ブラインド派もいるかららしいな。うわー……本当だったんだなー」
「ブラインドとか、オシャレさんだなー」
ようやく全ての窓にカーテンレールが取り付けられた。レースカーテンとカーテンを取り出す。
フックに引っかけてゆき、2人で黙々とカーテンを取り付けていく。
「あ゛〜ッ、終わったー!」
「腕、痛ぇ。地味にきた」
「ありがと、賢さん。コーヒー飲む? インスタントだけど」
武林がうなずくのを確認し、佐野はキッチンへと向かった。取り出したのは、カーテンと同日に購入したカップだ。
「おっ、新しいの。買ったのか?」
「駅前のモールでね。はい、どうぞ」
クルクルと匙をまわし終わった、瑠璃色の湯のみを渡した。リビングに置いているソファークッションにお互い腰をおろし楽な姿勢をとった。
「……いい色だな。持った感じもいい」
「それ賢さん用のだから好きに使ってね」
「マジか! ありがとうな」
「見つけた時に賢さん好みだと思ったんだよ」
ふぅふぅとコーヒーを冷ましながら、佐野は嬉しそうに笑っている武林を眺め、自身も満足気にほほ笑んだ。
「そういや、おまえ好み変わったか? カーテンの色、これ、どちらかっていうと……」
武林は湯のみを堪能した後、コーヒーに口をつけながら先程から感じていたことを尋ねた。
「うん、おれの趣味じゃないよね。なんでか見つけた瞬間、これだ! って感じたんだよ。……あ、これも賢さんの好みっぽいね! セールだったし、一石二鳥だ!」
「セール品かよ! ……いいのか? 俺好みで……」
「いいんじゃないかな。これ見た時に2人でいる光景が浮かんだし」
思わぬ言葉に武林はゲホゲホとむせた。佐野に背中をさすられ、ようやく落ち着きを取り戻した武林は気恥ずかしそうにしながら口を開いた。
「おまえ、俺のこと好きだよなぁ」
佐野は目を瞬かせた。武林の言葉がストンと胸に落ちたからだ。
「それかぁ」
「どうした?」
胸に手を当て、納得がいった顔をしている佐野を武林は不思議そうに見つめた。
うんうんと何度も佐野はうなずき、まるで小さな子が新しい発見をしたように瞳を輝かせている。
「おれ、賢さんが好きなんだ!」
誉めて! と言わんばかりの笑顔に武林の顔は赤く染まっていった。言葉が出ないのか、パクパクと口を開閉する様は池の鯉のようだ。
「ちょ……ッ、ちょい待ちッ! そそそれはどうどうどういう、好き、なんだ!?」
「賢さん、落ちつこう。うーん、おれの好きはそうだなぁ……。まだ挿れたいか、挿れられたいのかはわからないけど、そういう欲も含めた好きっぽい」
「ごほぁッ!」
けろりと肉欲込みだと佐野に伝えられ、武林はますます動揺をみせた。わたわたと慌てる武林が新鮮で、佐野はにこにこといい笑顔だ。
ゴホンと咳払いをひとつ入れ、武林は姿勢を正した。正座だ。佐野もつられて正座に直した。
「優、好きだと言ったが、俺たちは男同士だ」
「風呂上がりのちんちん何回も見てるよ」
「言い方! ……おまえは俺にキスができるのか?」
「飲み会の王様ゲームでべろちゅーまでした仲だよ、おれたち」
「あったなー、そんなこと。ああ、うん。不思議と嫌じゃなかったな」
「うん、おれもー」
2人の間に沈黙が訪れた。
眉間にしわを寄せながら、武林が再び口を開いた。
「優、この家を買ったってことは、後々は結婚考えてるんじゃないのか?」
「うちの両親、離婚してるから結婚は特に……。部屋の数さえあれば、定年退職した母さんと同居するかもくらいは思ったけど」
母さん稼ぎがいいから、こっち頼ってこないだろうけどね、と佐野は付け足した。
「でも、家見ながら、未来のお嫁さんとか……子供のいる光景を想像しなかったか?」
「そうなのかなー。んー、自分の家族、結婚……想像つかないな。賢さんは想像できる?」
「あー……んー? ……やべ、俺も無理だわ。むしろ、優が出てきたわ」
「賢さんも、おれのこと結構好きだよねー」
再び、2人の間に沈黙が訪れた。
武林は耐えるように眉間を寄せ、紅潮した顔をしていたが、意を決したように佐野の目を正面から見据えた。
「よし、優! 俺と付き合ってくれ!」
「よ、よろしくお願いします」
頭を下げると、2人して同じ行動をとったからか、ガツンと頭を派手にぶつけてしまった。痛む額を抑えながら、2人は笑い合った。
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