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第32話 花ひらく星月夜⑥

 背筋をすうっと撫でられて、そこへキスが降りてきた。  二人とも下着も脱いで素肌になった後、布団にうつ伏せにされて、背筋の一つ一つを確かめるように撫でられている。 「緊張してる?」 「大……丈夫」 「なんか、いつもよりガチガチになっちゃってるよ」 「……」  うまくやろうと思うのに、色々とバレていることが恥ずかしかった。  ちゅ、ちゅ、と首筋から背骨、腰へとくちづけされて、くすぐったいような、じんわり温められているような、ふわりとした感覚に目を閉じた。 「葉司の背中が好き。肩甲骨の下の、ここの筋肉とか」  優の掌がくるりと撫でていった。 「背骨も一つずつ確かめたいし」  背中の中心を、、柔らかな唇が辿っていって、うっすらと心地良さが巡っていく。 「腰のここの筋肉の弾力とかすげぇ好き。そこから続く小さいお尻とか」  くすりと笑うように言いながら、優が腰をぺろりと舐めたから、思わずビクッと震えた。  なんだか体が熱くなってきていて、腰には優の反応しきった昂りが強く当たっていて、胸の音がうるさいくらいに速くなる。 「葉司の、ここも好きだよ」  優の掌が脇腹からすべり上がって、胸をさらりと撫でた。  俺は仰向けになって、うっとりとした気分で、優の首筋から肩のラインを手でなぞっていった。  世界は微熱に染まっていって、ただ掌や肌で感じる感触がすべてになる。  愛しさで満ち溢れて、小さな花がほころぶように、感覚が花ひらいていく。  優の首筋をひっつかんで、そのくっきりした唇ににキスして、優の耳たぶを指先でくすぐって、二人きり密かな微笑をした。  抱きしめたい理由なんて、もう探す余裕もないくらい、ずっとこの肌で触れ合って、何度も温もりを刻み合っていたい。  きっとここにお互いがいることは当たり前じゃなくて、だからこの奇跡を願い続けていて。  一つでも優を幸せにしたくて、愛を伝えたくて。  それがもしも俺にできるなら、きっと生きてきた意味があったと思えるから。  優のひらいた唇に舌をぬるりと差し込んで、どちらからともなく指と指をからめて、深いキスに沈んでいく。  溜め息みたいな呼吸を交わし合って、一つでも多くの優を知りたい。 「んっ」  胸をすべっていった優の指が、ある一点でひっかかって止まった。  優の唇が首筋をすべって下りていった。 「ここ、すごく好き。触ってると小さいのにツンってなって」 「優……ま、待って……」  そっと乳首を摘ままれて、唇でやんわり挟みこまれた。  くすぐったさに身をすくめたけど、舌で舐められると、先のほうからジーンとした痺れが胸に広がって、呼吸が乱れた。 「脚広げて――」  言われるままに膝を立てると、優は指の腹で乳首を擦りながら、脚の間に割り入ってきた。 「あ……っ」  反応しきった昂ぶりがぬるりと擦れ合って、脚がビクッと震える。  パチパチと肌の上で感覚が弾けて、踊っている。  手を伸ばして、粘液が溢れる先端を掌で撫で回すようにすると、優が腕をつかんできた。 「あっ、葉司――」  優が感じていることに胸が熱くなって、はっきりと掌で包んで上下して擦った。 「ちょ、ちょっと止めて、今日すぐイキそ……ッ」 「いいよ……」  優の吐息を聴いていると、頭が熱くなって目眩の渦に落ちていく。 「だって、今日は、葉司に……っ」  ぐるりと手を回され、後ろに触られて、ビクッと腰が引いた。  優は慌てたみたいに、そばに置いてあったローションのフタを開けると、手に取り出して温めた。  優はぐいと俺の脚を押し広げると、内股にある傷痕に何度もキスをしながら、後孔に指をあてがった。  くるくるとしばらく撫でていたけど、ぬるりと指が入ってきて、最初の圧迫感に身をすくめた。  もう慣れたような、まだ慣れないような、不思議な感覚に緊張してしまう。 「葉司――息吐いて……」 「ん……っ」  押し進んでくる指と反対に、息を吐いて何とか力を入れないようにする。  優の器用な指が奥までローションを塗り広げるみたいに入って、急にぐるりと回った。 「あッ」 「ここ――プクッてなってるよ……」  内側で指先だけを動かされ、もう片手で昂ぶりを上下に擦り始められて、下腹部にブワッと快感が広がった。 「ん、んッ!」  後孔の奥に押し込むように指を揺らされて、そのたびに電流が走ったみたいになって、背中が反った。  ツプツプと入る指が増やされて、圧迫感は増しているのに、気持ちいいところを挟まれたり、回すように撫でられたりすると、腰がビクッと勝手に動いてしまう。 「あ……あぁっ」  その間にも続けて前の昂ぶりを刺激されて、もうどこからの快楽なのかはっきりしなくなってくる。 「すっかり感じるようになったね――可愛い……もう一本ゆっくり入れるからね」  恥ずかしさでカッと頬が熱くなったけど、三本目の指が入ってくる感じがして、さすがに緊張で身が強張った。  中を広げるようにゆっくり入ってきて、背筋がぴりりと引きつれる。 「葉司の中、熱くて気持ちいいよ……ここがいい?」 「ひ……っ」  昂ぶりの先端をぐるりと強く指先で擦られながら、後孔の弱いところを優しく撫でられて、抑えきれない声が漏れた。  指は慎重に慣らすように蠢いていて、そのたびにローションでぬめる音が鳴って、恥ずかしさに耳を塞ぎたかった。 「葉司――どんな顔してるかわかってる……?」 「え……うぅッ」  ぎゅうっと突き入れらて、奥までいっぱいになって、苦しいのにズキンと甘く震える。 「ゆ……う……ッ」 「うん。ここにいるよ――そんな目に涙いっぱい溜めてたら、もう俺どうして良いかわかんないよ――」  昂りを強く指で擦られて、内股がビクビクッと痙攣した。 「あぅ……ッ!ダ、ダメ……ッ」 「もう俺の、挿れていい?ここに――」  囁きは濡れたように甘くて、俺は頷くのに精一杯で、段々と何も考えられなくなっていく。 「も……我慢できないかも――いい……?」  乳首にちゅ、ちゅ、とキスされながら、どこか遠くなりそうな意識の中で、俺は何度か小さく頷いた。  指をゆっくりと引き抜かれて、自分の速い呼吸だけが部屋に響いている。  優はそばに置いてあった小さい袋を取ると、指先で器用に破いて、中身を自分の昂ぶりにあてがった。 「コンドームするね?」 「ん……」  フワフワした意識の中で、初めて見たそれに思わず視線が止まった。  優は手早くつけ終わると、俺の腰をぐいと引き寄せた。

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