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【2】SIDE蓮見(2)-1

 現場の監理というのは、やろうと思えばいくらでもやることがある一方で、手を抜こうとすれば、それもまた容易にできるところがある。  個人住宅のように比較的規模の小さい建物では職人のほうが仕事の段取りを知っている場合も多く、右も左もわからない新人を現場に行かせ、実際の采配は大工の棟梁(とうりょう)に任せ切りという会社が実はいくらでもあった。  ウエストハウジングは、大工だった社長が小さな工務店から出発して一代で築いた会社だ。  四十年の間に県下でも有数のハウスメーカーにまで成長したが、提携する職人を除いた正社員の数は二百人程度で、大手一流メーカーと比べれば決して大きな会社ではない。  それでも、現場を大事にしてきた会社らしく、研修には十分な手間と時間をかけてもらった。 「家は、普通の人が自分たちのために建てる建物です。自分たちの働いたお金で何十年という長いローンを組んで建てます。  家にとって大切なことは、安全で清潔で快適なことと、長く住めること。地震に耐える丈夫さを備え、暑さや寒さ、雨や風、嵐から住む人を守ることです。  帰ればほっと一息つくことができて、安心して眠ることができる場所でもあります。  家は住む人の暮らしや人生を守る箱なのです」  入社初日に社長からそう教えられた。

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