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【2】SIDE蓮見(2)-9

 その後、すぐに真面目で礼儀正しい営業マンの顔に戻ってゆく三井を、蓮見は少し残念な気持ちで見ていた。  中学生の頃、初めて女子と二人で帰り道を歩いた。その時の思い出がなぜだかふいによみがえり、あの時と同じような甘酸っぱさを覚える自分に苦笑する。 (なんだか、三井さんといると調子が狂う)  そして、そんな自分が決して嫌ではない。むしろ、背中に羽根でも生えたような軽やかな気分になる。  不思議だった。  職人たちに声をかけ、三井と一緒に現場を離れてクルマに向かいかける。一歩目を踏み出す前に、蓮見の作業着の内側でスマホが振動した。 「ちょっと、ごめん」  三井に詫びて、画面をスワイプする。  通話の相手は午後一番で検査を受ける担当現場の棟梁で、ひどく困惑した声で緊急事態を告げてきた。  内容を聞いているうちに、重い荷物を背負わされた時のように蓮見の肩はズシリと重くなっていった。 「……わかりました。今から行きます」  短い会話を終えて前方に目をやると、こちらを向いた三井がにこりと笑う。それから軽く手を振ると、コインパーキングがいくつか並ぶ表通りの方角に足を向けてしまった。  蓮見は黙って会釈を返すしかなかった。

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