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【3】SIDE蓮見(3)-3
「新井さんか……」
顔も体型も丸い、いかにも人がよさそうな四十男の顔を思い出す。何度か現場を担当したことはあるが、ほとんど顔を会わせたことがないので、どんな人物かまでは知らなかった。
田中はすでに新井にも電話をかけたと言う。
「客から言われて、確認しようとしたんだよ。出なかったけどな」
「中間検査が今日だってことは知ってるんですよね。待ってれば来るんじゃ……」
「来ねえよ」
田中が鼻で笑う。
「新井さんが検査に立ち会ったことなんかねえよ。現場にだって滅多に来ねえし、たまに来ても意味の分かんないこと指示してくだけだ」
どこそこの写真撮っておけと、言われなくても撮るものや、そこを撮ってどうするのだと思うものの撮影を指示したり、全く問題のない箇所についてしつこく質問していったりすると言う。
「職人は下請け、自分が取った契約で仕事をさせてやってるとでも思ってるんだろ」
何もわかっていないくせに威張り散らしていく。ストレスの捌け口にでもしているのだろうと言う。
愛想のよさそうな丸い男を思い浮かべ、蓮見は困惑する。
職人からの電話には出なくても、蓮見がかければ出るのではないかと田中に言われ、登録先から新井の番号を探した。
かけてみるが、やはり出ない。
「休みか?」
今日は木曜日だ。
営業職の人間は水曜以外の休みを週に一日、各自で取る。土日を避け、会議の多い月曜を避けると、火曜か木曜に休みを取る者が多かった。
(だけど、自分の客の検査の日だぞ……)
スマホを耳から話すと、田中が「どうする?」と聞いた。
三井の対応を目にしたばかりの蓮見は、客が希望しているのならできるだけそれに沿いたいと思った。
だが、田中の意見は違うらしい。
「客にもずるいところがあるんだよな」
「ずるい?」
「工事に入る前にちゃんと希望してあったんならさ、見積もりにも入ってるはずだろ。化粧手摺はオプションなんだから」
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