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【3】SIDE蓮見(3)-10

 そして、次の瞬間、蓮見は呆然とした。 (少ないほうどころか、驚くほどない(・・)……)  いまや三井は全社でも五指に入るほどの営業成績を上げている。現場の数は相当数に上るはずだ。  だが、蓮見の知る限り、三井の現場で工事が止まるのは、今回のように直接頼み込んできた数件以外一度もないのだ。 (すごいことかもしれない……)  やはりもっと三井のことを知りたい。  限界を訴えて鳴く腹をさすりながら、昼を一緒に食べ損ねたことをつくづく残念に思った。  そして、誘った時の三井の赤い顔を思い出すと、なぜだかまた心臓が小さく騒ぎ、一方で心が軽くなる。 (なんで……。あのタイミングで、なんであんな顔するんだよ……)  それもまた、不思議なことのひとつだ。  思い出して心臓をドキドキと弾ませる自分も含めて。 (でも、あの人は男だ……)  蓮見は笑った。  五つも年上の男だ。とてもそうは見えないけれど、今年二十八になるという男なのだ。  綺麗で、笑うと可愛くて、真面目で一生懸命な、不思議な男。  わからないことと知りたいことがたくさんある、ひどく気になる人……。

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