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【4】SIDE蓮見(4)-3

 祐希が怪訝そうに見上げてくる。 「な、なんでもない」 「何も聞いてないけど?」  蓮見は動揺を隠すために、ははは……と無理に笑った。 (ほんとに、なんなんだよ、俺は……、最近ちょっと、おかしすぎるだろう……)  疲れているのだ。  そう自分に言い聞かせてバスに戻った。  どうも三井のことになると動揺しやすい。  バスの座席に落ち着くと、隣に停まっている車両の窓が目に入る。ガラスの向こうにちょうど三井の姿があった。 (そうだ。そう言えば、三井さんは大丈夫なのか? 同室のヤツらに何かされたりしないだろうな)  西園寺は常に祐希のまわりに目を光らせている。それを蓮見は知っている。  営業マンの中には、酔うと自分は両刀だなどと言い出す者がいるし、一定の割合でゲイやバイはいるという統計結果もある。これだけたくさんの男がいれば、それなりの人数で同性に興味を持つ者がいてもおかしくない。  営業社員の部屋は展示場ごとに割り当てられている。三井が所属する国島展示場のメンバーは所長の別府(べっぷ)をはじめ比較的穏やかで紳士的な者ばかりで、そうそう間違いが起こるとは思えないが、絶対に安全とは言えない気がした。  気になりだすと、三井から目を離せなくなる。  けれど、じっと観察していても、窓の向こうで同僚と笑い合う三井には意外なほどその手の色気がなかった。  蓮見に見せたような無防備な表情が現れることはなく、生真面目で清潔な、ふだん通りの三井だ。 (なんか……、大丈夫そう、かな?)  息を吐き出すのと同時に、大型バスがゆっくりと動き出す。  適当に土産物屋に寄ったり簡単な観光をしたりしながらも、まだ明るいうちに宿に着いた。せっかくの温泉旅館だ。何はともあれ、ひとまず湯に浸かった。

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