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【4】SIDE蓮見(4)-4
旅の二日目に行われる神社への参拝が社員旅行の本来の目的だ。
わかっていても、やはり盛り上がるのは初日の夜の大広間での宴会である。
ひと風呂浴びて浴衣に着替え藍色の丹前を羽織った人々が、嬉々とした様子で次々と宴会場に足を踏み入れる。
二百人を超すメンバーのために、銘々膳と座布団がずらりと並んだ大広間。それを壮観だなどと思いながら眺めていると、隣に立った谷が「今年が最後かもな」と感慨深そうに言った。
「来年からは、部課長クラスまでの役職者と、よくても展示場の所長たちくらいの参加になるんじゃないか。さすがにこれ以上の人数になっちゃあ、宿の手配も難しいだろ」
「毎年、バスが一台増えてますもんね」
蓮見が入社した年はもう少しコンパクトだった。
「どんどん大きくなるから」
部課長と所長だけの参加でも創業当初の人数よりはるかに多いだろうと谷が言った。
「でも、ずっと続いてきたことがなくなるのは、やっぱり寂しいよな……」
最初の乾杯が専務の大声に合わせて唱和されると、宴席はあっという間に盛り上がりを見せる。
海の幸山の幸が次々と銘々膳に配られ、ビールや日本酒の瓶が瞬く間に空になっていった。
蓮見は三井の姿を目で探した。
同じような藍色の丹前が並ぶ中、一番離れた入り口近くの列にその姿を見つける。
頭の小ささや細身であることも目印になるが、それ以上に姿勢のよさや所作の美しさに目が引きつけられた。
少しも着崩れていないのに窮屈な印象がない浴衣も、羽織っただけの丹前も、どこかきちんとした印象で品がいい。
同じ展示場のメンバーたちとくつろいでいる姿は、ふだん通りの真面目で控えめな三井だった。飲んで醜態をさらす者も増えてくる中で、態度も表情も全く崩れていない。
畳敷きの大広間に据えられた二百余りの膳が空になり、それぞれ好きなように席を移動し始める。蓮見は三井に近付いた。
隣に腰を下ろすと、大きな目がかすかに見開かれる。
こういう時の表情はちょっと危ないんだよなと、ドキリとしつつ心の中で警鐘を鳴らす。
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