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【4】SIDE蓮見(4)-6

「おい。待てよ、おまえら! 俺の話を聞けって!」 「えー」 「おまえら、ほんと何もわかってない! 女なんかとヤるより、綺麗な男のほうがよっぽどいいんだからな!」 「新井さーん、モテないからって、いい加減にしてくださいよ」  立ち上がった営業マンの一人が聞いた。 「で、新井さんはどうするんです? 行くんですか、行かないんですか?」  新井は黙り、どうしようかと迷う気配を見せた。 「行くなら、新井さんの奢りかな」  誰かが言った。  全員が「やったー」と万歳をするように手を上げる。 「なんで俺が奢るんだよ!」 「だって、先輩じゃないですかー」 「そうですよぉ。いつも、俺は先輩だって威張ってるんですから、こういう時こそ先輩らしいとこを見せてくださいよう」  男たちがへらへらと笑う。  新井は真っ赤になって、彼らを睨み上げた。 「誰が行くか……」  新井を残し、男たちがぞろぞろと宴会場を出てゆく。廊下を歩く彼らの声が、襖の向こう側を通り過ぎていった。 「なんで、声かけたんだよ。あの人が奢ってくれるわけないだろ」 「だからだよ。下手についてこられて、酔ったふりでもされて、こっちが金を払わされたんじゃたまんないからな」  新井に視線を戻すと、三人ほど残った男たちにまだ何か話している。  人の姿がまばらになり、周囲はずいぶん静かになっていた。 「うちの展示場の近くにさ、本家新宿を真似した『二丁目』って地区があるの、知ってるだろ?」   残った三人はまだ新人らしく、新井の話に真剣に頷いている。 「聞いたことがあります。新宿ほどじゃないけど、その手の店がけっこう集まってる場所があるって……」 「まあ、本物と比べたら、ちっぽけなもんだけどな……」  何度か足を運んだことがあるらしく、店の名をいくつか挙げては、その特徴を長々と話す。聞くともなしに聞いていたが、結局は女性の代わりに男が接待するというだけで、話の中身はあまりないようだった。  新人たちも新井の話に飽きてきて、互いに別のことを話し始める。  彼らの気を引くためか、新井は妙にもったいぶった口調で、「実は一つ、とっておきの秘密の店があるんだけどよ」と言った。 「その店のことは、絶対に人に教えちゃいけない決まりなんだけど……」

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