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【4】SIDE蓮見(4)-10
細長く折られたパンフレットなら蓮見ももらったが、表紙の写真を眺めたくらいで中身などろくに見ていない。
たとえ見たとしても、行くかどうかもわからない店の場所など覚えてはいないだろう。
やはり、三井は不思議だ。
「じゃあ、取りあえず大浴場のほうでも行ってみるか。ついでにもうひと風呂浴びて……」
言いかけて、三井の裸身を想像しそうになり、慌てる。
次いで、その裸身をほかの男が見るという現実に気付いて、思わず眉間に皺を寄せた。
「さっき……」
「ん?」
「さっき、一回目の風呂、誰かと一緒になったか?」
「ああ。設計の水野くんがいたけど……」
「祐希? ほかには?」
三井は首を振った。
そんなはずはない。
ほとんどの人間が到着後すぐに大浴場に向かった。男湯は隙間もないほどの大混雑だった。たった二人しか人がいない時間などあったとは思えない。
だが、三井はあっさりこう言った。
「大浴場が混んでそうだったから、三階の貸切風呂に行ったんだ」
「貸切風呂? そんなのがあったのか?」
それもパンフレットに書いてあったという。
通常は有料の家族向けの貸切風呂を、百人以上の団体客には百人に付き一ヵ所無料で提供する。そう書いてあったらしい。
誰がそんな細かいところまで読むか、というのが正直な感想だ。
読んでも意味がわかりにくい。
「じゃあ、そっちに行ってみよう。三階にもラウンジがあるって言ったよな」
「うん」
「せっかくだから、そっちの貸し切り風呂でも入って……」
「え……」
足を止めた三井が、驚いたように蓮見を見る。それから、ふいに目を逸らして頬を赤らめた。
蓮見は動揺した。
自分の顔が、三井以上に赤くなるのがわかった。
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