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【4】SIDE蓮見(4)-11

「あ……。ち、違……。そうじゃなくて……」  何が違って、何がそうじゃないのか、よくわからないまま慌てて否定した。 「その、別に、ヘンな意図はないから……」 「うん……。わかってる」  ごめん、とどちらともなく小さく謝った。  ギクシャクとエレベーターに乗り込み、ほかの乗客と一緒に無言で階数表示を睨み続け、三階で降りる。  ラウンジのある階のホールは広く、右手に格子の引き戸がいくつか並んでいた。引き戸の脇には行灯(あんどん)風の明かりが灯り、その下に半紙が下がっている。 「二つ目の引き戸が、うちの会社の男性用貸切風呂だから……」  そばまで行くと、明かりの下の半紙に「ウエストハウジング御一行様(殿方)」と、確かに書いてある。  引き戸を引いてみると、框の前に二人分のスリッパが並んでいた。 「誰かいるみたいだな」  ほかにも人がいるとわかり、ぎこちない空気が少し和らぐ。 「どんな感じか、ちょっと見てきてもいいか」 「うん。思ったより広かったよ」  スリッパを脱いで脱衣室の床に上がり、衝立(ついたて)の影になったガラス戸を細く開けて浴室内を覗いた。 「ん……」  湯けむりの中から小さい水音とくぐもった声がかすかに聞こえた。 「雅人さん……、だめ……」  蓮見はぎょっとした。  全身の毛穴が開いて汗が噴き出す。  抑えた照明と湯けむりのせいで、人の判別まではつかない。しかし、蓮見には中にいるのが誰で、この場の状況がどんなものなのかが、瞬時に理解できた。 「蓮見?」

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