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【5】SIDE蓮見(5)-3
「本当に大事な情報を共有するためにも、嘘は書かないほうがいいと思うんですけどね……」
リビングでスキップをしていた真由が戻ってきて口を挟む。
「あんなところの書き込み信じないで、あたしたちを信じればいいのにね。三井さんなら絶対大丈夫なんだから」
得意そうに胸を張って、笑いながら続ける。
「この前のキッチンのこと話したら、やっとユウちゃんママ、じゃあ完成したら見に行くね言ってくれたんだよね。だから、今日さっそく連れてきたちゃったんだよね」
一通り一階を見終わった妹母娘いもうとおやこが三井と一緒に戻ってくる。
娘のほうが真由を呼んだ。
「ねえ、真由ちゃんの部屋ってどこ?」
「あ。ユウちゃん。二階だよ。見るんだったら、あたしも行く」
真由も一緒に消えてしまうと、安田夫人がゆっくりキッチンに近付いていった。
人造大理石の天板を撫でて「よかった……」と呟き、満足そうに蓮見を見て微笑んだ。
キッチンは最初の計画通りで、何も変更していない。
何をそんなに満足し、安心したのだろうと思った。
「三井さんが真由の話を聞いてくれなかったら、このキッチンを見る度にずっと真由のことを考えたんじゃないかなぁと思って……」
安田夫人の言葉に、「ああ……」と頷き、蓮見も笑った。あの少女なら、しばらくの間は、あれこれ文句を言いそうだ。
「どこの家でも、ここは失敗したなっていう場所や気になるところはあるって聞くし、そういうところがあっても住んでるうちにだんだん慣れるとも聞くけど……」
それがキッチンだと、主婦には辛いかもしれないと夫人は言った。
「毎日、お料理する度に、真由に可哀そうだったかなぁって思いそうで……。自分の不満ならともかく、あの子が不満だったことを思い出しながら、毎日毎日、朝昼晩と一生使うなんて、ちょっとね」
夫人の言葉に苦笑が消える。
「でも、三井さんと監督さんのおかげで、逆にステキな思い出のある場所になったわ。どうもありがとう」
頭を下げられて、慌てて「そんなことは……」と口にした。
(そうか……。だから三井さんは……)
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