42 / 207
【5】SIDE蓮見(5)-5
「男同士だし、三井さんが無理なら仕方ない。でも、聞いてほしかった」
気持ちを伝えたことで、少し落ち着きを取り戻した。心臓はまだバクバクと肋骨の内側で暴れている。
「あの時はまだ、自分でもよくわかってなかったけど、いいかげんな気持ちでキスしたわけじゃないから」
驚ききった顔でぽかんと見上げられて、顔が熱くなる。
考えてみたら人生初の告白だった。段取りも何もあったものではない。
自分の武骨さが、急に申し訳なくなる。
「なんか……、ごめん」
「蓮見、ほんとに……?」
「うん。でも、急にこんなこと言われたら、困るよな。ごめん」
三井がわずかに首を振る。
「困らない」
「え……」
「困らない。だって……」
綺麗な顔の中で、鼻と頬がふわりと薄紅色に染まってゆく。目の縁や耳まで赤くなった三井が、一度息を吸ってから、囁くように言った。
「僕も、蓮見が好きだ……」
息が止まる。
心臓も止まる。
天にも昇る気持ちというものが本当にあることを、蓮見は知った。
「ほんとに?」
三井が頷く。
もう一度、「ほんとに」と聞きそうになり、けれど、それより先に三井を抱きしめていた。
「蓮見……っ」
施主の家のリビングだ。
南と東には大きな窓がある。まだカーテンのない透明な窓だ。
けれど、蓮見は我慢できなかった。
三井の手を掴んだまま、外から死角になる玄関ホールまで引っ張ってゆくと、そこでもう一度しっかり抱きしめた。
細く華奢に見えても骨格はしっかりしていて、背も平均より少し高い。三井の身体は、蓮見の長い手足にちょうどいいサイズだった。
ともだちにシェアしよう!