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【5】SIDE蓮見(5)-8

 ドアの前で西園寺が言った。 「あの夜、一緒にいたのって三井か?」 「あの夜?」 「社員旅行の夜だよ。おまえ、俺と祐希の濡れ場を覗いてただろ」  人聞きの悪いこと言うな。 「自分たちが勝手にサカってたんだろ。ほかのヤツに見られたらどうするつもりだったんだよ」 「ほかのヤツなんか来ない」  西園寺は言い放つ。 「旅行会社の担当者も幹事も、貸切風呂のことを把握していなかった。だから、全体に向けてのアナウンスもなかった。パンフレットの端に記載された、期間限定かつ平日限定かつ団体客専用の、ほぼ忘れられたサービスに気付く人間なんか、俺のほかには一人しかいない」  実際、祐希を一人で行かせた時も、会ったのはその人物だけだったと西園寺は言った。 「三井と一緒だったんだろう?」 「だったらなんだよ」 「おまえ、最近機嫌いいのって、まさか三井のせいじゃないだろうな」 「だから、だったらなんだって聞いてんだよ」  西園寺の目がすっと眇められる。  頭を傾げ、値踏みするように、蓮見の頭のてっぺんからつま先までをじろりと眺めた。 「悪いことは言わない。遊びならやめておけ」 「な……」 「おまえはまだ若い。異性とも付き合える。三井はおまえには合わねえよ」 「合わないって……、急に何だよ」  蓮見の問いには答えず、ガラス張りの喫煙室を出た西園寺はくるりと向きを変えて蓮見の顔に指を立てた。  口の形だけで「ヤ・メ・テ・オ・ケ」と繰り返す。  無表情で蓮見を見据え、背を向けると階段室に消えた。 「なんなんだよ」  納得できない気持ちで吐き捨てる。  人の幸せな気持ちに水を差すようなことを言う。西園寺はやはり性格の悪い男だ。 46/38 1234567891011121314151617181920212223242526272829303132333435363738

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