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【8】SIDE蓮見(8)-1 ※R18
週明けの月曜日、現場から戻って細かい事務仕事をしていると、机の上の内線電話が鳴った。
「はい。工事部です」
『俺だ』
「どちら様ですか」
『話がある。喫煙室に来い』
一方的にそう言うと、西園寺は電話を切った。
(なんだ……?)
受話器を見つめ、蓮見は首を傾げた。
わざわざ喫煙室に呼ぶのなら、仕事の話ではないのだろう。個人的なことで、あの男と話すことなど思いつかない。
「なんだよ」
十平方メートルほどの狭い室内には西園寺しかいなかった。
「おまえ、三井に何かしたか」
「え……?」
思わず視線を泳がせる。
「何か、したのかって、聞いてんだよ」
「何かって、なんだよ……」
西園寺の目がわずかに眇められる。一度深く吸い込んだ煙をやけにゆっくり吐き出した。
ゆらゆらと揺れながら、紫煙が天井の換気扇に吸い込まれてゆく。
「三井さんが、どうかしたのか」
蓮見の視線が戻るのを待って西園寺が口を開いた。
「別府所長が俺のところに来た。三井が体調を崩したらしい」
「え……っ!」
「この六年間で初めてだ」
「体調崩したって、いったい……」
まっすぐ目を合わせたまま、西園寺が聞いた。
「ヤったのか」
「な、……っ」
「ヤったんだな」
同じ高さにある目が、怒りに燃えていた。
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