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【8】SIDE蓮見(8)-2 ※R18

 チッと短く舌打ちして、西園寺は視線を外した。 「ケダモノめ」  土曜日の夜、三井の部屋で結ばれた。その後、翌日も仕事がある三井を残して蓮見は一度寮に帰った。  けれど、昨日の夜になって、再び三井に会いたくなった。  我慢できずに訪ねると、三井は笑って部屋に入れてくれた。そして拒まれないのをいいことに、白い身体を何度か奪ってしまった。  蓮見の下で官能に染まる三井は美しかった。必死に蓮見に縋りつき、声を殺して乱れる様が愛しかった。  情交の様が脳裏によみがえると、股間が疼いて熱くなる。  愛しくて可愛くて、何度交わっても終わりのない欲望が身体の奥から湧き上がって、許されるなら、ずっと三井とつながっていたいと思う。 「おまえ、いくつだっけ」  ふいに西園寺の声が届く。 「二十三だけど」 「若いな……」  ヤりたい盛りだ、とため息を吐く。 「だけど、三井はやめとけ。……つーか、やめといてやれ」 「なんで、あんたにそんなこと言われなきゃなんないんだよ。俺と三井さんが何をしてたって、あんたに関係ないだろ」  睨みつけると、顔にふうっと煙を吹きかけられた。西園寺の目も真剣だ。青みが買った炎が奥のほうで揺れている。 「関係があるから口を出している。三井に死なれたら、繊細な俺のハートは三人分の痛手でボロボロに傷つく。修復できないくらいにな」 「死ぬ……?」  唐突に突き付けられた言葉の不穏さに、一瞬言葉を失う。 「死ぬってなんだよ」  スタンド式の灰皿に煙草を押し付けながら、西園寺は小さく舌打ちした。余計なことを言った、そう言いたげに視線を外す。 「なんで、三井さんが死ぬんだよ」 「とにかく、三井はおまえには荷が重い。一時的な恋愛感情だけで振り回すのはよせ」 「だから、なんで……」 「そっとしといてやれ」  頼むから、と。  最後の言葉は、蓮見にというよりも、まわりの全てに懇願するような響きがあった。  西園寺は三井の何を知っているのだろう。  問い詰めても、「おまえには関係ない」のひと言で切り捨てられる。知らなくていいことだと。 「おまえなら、ほかにいくらでも相手がいるだろ。もっと気楽に付き合える人間を探せ」 「ふざけるな」  どうして、本気ではないと決めつけるのだ。

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