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【13】SIDE三井遥(3)-1

 ――死因は心室細動による突然死。 「日常の言葉で言えば……、いわゆる心臓麻痺ですね」  警官の報告を遥はぼんやりと聞いた。  肺にはほとんど水が入っておらず、瞬間的に、苦しまずに死に至ったのだろうということだった。それが何かの慰めになるのか、遥にはわからなかった。  警察から遺体が戻れば葬儀が執り行われる。  その前に、遥は三井家の離れを出ることにした。  梓が残した通帳と印鑑に手紙を添え、迷惑をかけたことと、挨拶もなく出てゆくことを詫び、どうか梓を三井家ではなく梓の祖母の墓に……と書きかけて、その部分を破り捨てた。  遥には梓を弔う力はない。  全て三井家に任せるしかなかった。戸籍上の実家というだけで梓を引き取り、本来なら憎いであろう遥も住まわせ、三井家は二人の生活の面倒をみてくれた。  最期まで。  これ以上、三井家に何かを願うことは許されない。こうしてすべて押し付けて、黙って出てゆくだけでも、本来許されることではないだろう。  それでも、もう限界だった。  どこかへ逃げてしまわなければ、自分が壊れそうだった。  気が狂い、鬼になって、何もかもをめちゃくちゃにして、まわりの世界ごと自分を壊してしまう気がした。  手紙ではただ不義理を詫びて、別れの言葉を添えた。  どこへゆくという当てもないまま、いつかの質屋で時計をわずかな金に換え、高速バスの乗り場に向かった。宗森家の力の及ばない場所、ただそれだけの理由で東京行きのチケットを買った。  二度とこの土地に戻ることはないだろう。そう心に呟いていた。  車窓を流れる闇の向こうを、雪の舞う故郷が遠ざかってゆく。深夜に乗り込んだバスは、明け方には見知らぬ土地の大きな街に着いていた。  数えきれないほどの建物が建ち立ち並び、街には人が溢れる。

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