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【13】SIDE三井遥(3)-3

 前立てから太い肉棒が現れた瞬間、遥は慌てて目を逸らした。 「すみません。あの、僕……」 「あなた、見たところ家出少年か何かでしょ。どっちみち働かなきゃならないんだったら、うちみたいな良心的な店にしといたほうがいいわよ。このへんには、ひどいところもけっこうあるんだからね」  男は憐れむように遥を見る。 「そんな、いかにも行くところがありませんで顔でうろうろしてたら、あっという間に食い物にされちゃうわよ」  悪いことは言わない。食いものにされる前に、家に帰るかどこか別の場所に行くほうがいいと、その人は言った。 「それとも、ほんとにうちで働く?」  もう一度遥が首を振ると、「気が変わったらいつでも来てね。あなたみたいな子、ほんとに大歓迎だから」と言って、男はドアを開けてくれた。  店の外に出て、ぼんやり立っていると、今度はくだけたスーツ姿の若い二人組に声をかけられた。 「なんか困ってそうだね。いい仕事があるよ」 「俺たちと、おいでよ」  いきなり腕を強く掴まれ、驚いて勝手に言葉が出た。 「は、離してください」 「離してくださいだって! お上品!」 「いいねぇ。すげえ別嬪だし、これならかなり稼げそう」  助けを求めて周囲を見回すが、ネオンの中を歩く人々は誰も遥を見ていなかった。  両側から腕を組まれ、引きずられるようにどこかへ連れていかれそうになる。 「離して……っ」 「こら。何してるんだ」  急に声をかけられ、振り向くと警官が立っていた。  チッと舌打ちした二人組が「まだ何もしてねえよ」と不機嫌に吐き捨てて、逃げるように去っていった。  ほっとして、身体から力が抜けてゆく。 「家出か?」  警官の厳しい口調に顔をあげる。  言葉に詰まっていると「年は?」と続けられ、短い答えを口にした。 「二十歳(はたち)です」 「ほんとか? 身分証か何かあったら見せて」

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