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【13】SIDE三井遥(3)-6
「でも……」
「ここ、二部屋あるからさ。気にしないで使いなよ、ね? なんなら、こっちで住むところが見つかるまで、いてくれてもいいし」
遥は男の顔を見た。相変わらず歯を見せて笑っている。
親切な男だと思った。
そして、まだ、世の中には自分に親切にしてくれる人間がいたのかと、不思議な気持ちになった。
それとも、宗森家の影響がなければ、人は皆、こんなふうなのだろうか。
宗森家の息子だからという理由で遥を丁重に扱うわけでもなく、壮介を畏れて遥を避けるわけでもなく……。
(ああ、でも……)
中学や高校の時の友だちは、こんな感じだっただろうか。年が近いように見えるこの男は、これから友だちになれる相手なのだろうか。
そんなことを考えながら、勧められるまま奥の部屋に入った。リビング同様、人の暮らす気配のない寝室で、強張った身体をベッドに横たえた。
胃の異物感がひどく、目を閉じてもなかなか眠れない。
生きる気力さえ希薄になった精神状態の中、それでもずっと昂ぶったままの神経は、なかなかうまく休んでくれなかった。
しばらくすると、リビングから人の声が聞こえてきた。
「何人?」
「四人。一人五千円ずつでいいよな」
「なんだよ。約束と違うだろ」
「合わせて二万だ。どうせ丸儲けなんだから、欲張るなよ」
「しょうがないな……。まあいいか。だったら、少し待ってろよな」
何かものを動かす音が聞こえた。リビングと隣の部屋を声が行ったり来たりする。
「何、やってんだよ」
「撮影の準備。俺のカメラでしっかり撮ろうと思って」
「スマホで十分だろ」
「今回、ちょっと見ないような上玉なんだ。すっげえ美人。だから……」
「そんな上玉なら、早くヤらせろよ」
「脅すだけならスマホでいいだろ」
「だから、脅すために撮るんじゃないんだよ。商品になるようにしっかり撮って、業者に買ってもらおうかと思って」
「はあ? そんなの次から撮れよ」
「いいから、はやくヤらせろ」
「その美人て、こっちの部屋にいるのか?」
人がドアに近づく気配がする。遥は息を詰めた。
「やめろよ。まだ寝たばっかりなんだから」
「はあ? 何言ってんの、おまえ」
「だって、起こしたらかわいそうだろ」
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