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【15】SIDE三井遥(5)-7

 入社一年後に、蓮見は監督として独り立ちした。  遥の担当物件を蓮見が監理することも何度かあった。  施主の希望によっては、工事開始後でも遥は現場に調整を頼むことがある。そんな時、時に迷惑そうな顔を見せつつも、蓮見は必要な対応をきちんとしてくれることがわかった。  現実の予算や工期を調べ、対応できる限り対応しようとする。彼ができないと言う時は、本当にできないのだと信じることができた。  ある時、どうしてもキッチンの向きを変えたいと言う施主がいた。 「今から、キッチンの向きを変えたい?」  夜遅くに工事部の事務所を訪ねた遥に、蓮見は迷惑そうだった。年明け、現場が一番忙しい時期で、連日遅くまで仕事をしているのを知っていた。  無理はないと思った。  それでも彼は遥の話に耳を傾け、できる限りの対応を約束してくれた。ほっとして頬が緩むと、黒い目でじっと見つめられた。  どうしてか心臓がとくりと音を奏でた。  続く遥の質問にも丁寧に答え、別のパターンの依頼にも対応してくれる。面倒くさがる監督も少なくない中、できることは全てやろうとしてくれる姿勢に感謝が増した。。  精いっぱい心を込めて礼を言うと、また不思議そうに遥の顔を見る。  黒い目にじっと見つめられると、心がそわそわと落ち着かなくなった。一方で、蓮見ともっとゆっくり話ができたらいいと、そんなことを思った。  彼が何を考えているのか、もっと知りたいと思った  翌々日、施主とともに現場を確認した後、思いがけず食事に誘われた。願いが叶ったようで嬉しくて、笑みが零れる。なぜか少し緊張もしていた。頬が熱かった。  しかし、結局は、蓮見に仕事が入ってしまい、その誘いはふいになった。それでも、心が温かくなるような嬉しい出来事だった。  二月になると、かつて孤独を味わった恒例の社員旅行が行われた。遥の参加は七度目だ。  四度目くらいからはさすがに慣れて、旅行も楽しめるようになっていた。今年も同じ展示場のメンバーと、他愛のない話をしながら二日間のんびりすごせればいいと、そう思っていた。  宴会もいつも通り。無礼講の大騒ぎが繰り広げられる。  体質的に酒に弱いわけではいが、羽目を外すのが怖くてほどほどに飲む。周囲の人間たちが絵にかいたような酔っ払いに変わる頃、ふいに蓮見が隣の座布団にすとんと座った。心臓が跳ねた。 「酒、強いんだな」 「実は、そんなに飲んでない」

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