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【15】SIDE三井遥(5)-12
「急にこんなこと言われたら、困るよな。ごめん」
「困らない」
慌てて答えていた。え、と聞き返されて、もう一度はっきり「困らない」と告げる。
困るわけがない。
「だって……」
息が苦しくて囁くような声になった。
「僕も、蓮見が好きだ……」
思ったままを口にしながら、自分でも驚いていた。
遥の腕を掴んだまま、蓮見が窓の広いリビングから玄関ホールに移動する。そこでもう一度「好きだ」と告げられながら、口づけられた。
何度も、何度もキスをされて、舌を絡められると頭の芯が痺れたようになる。しがみつくように作業着の胸のあたりを握り締めていた。
身体を強く引き寄せられ、脚に硬い熱を押し当てられて、遥は驚いて飛び上がった。
助けを求めるように名前を呼ぶと、一度強く腕に力を込めた後で、蓮見が身体を離す。気まずそうに目を逸らす様子が、ひどく可愛いと思った。
愛しさが胸に満ちていった。
次の仕事が控えている。坂本と一緒に新規の顧客を訪ねる約束をしていた。
離れがたい思いで、現場を後にする。まるで雲の上を歩くようなふわふわした気持ちが、遥の中に広がっていた。
誰かを好きだと思い、それを伝えあう。それは、こんなにも嬉しくて全てを満たされるものだった。
生きていることが嬉しいと、梓を亡くして以来、あるいは宗森家を追われて以来、忘れていた感情がよみがえる。
生きていることが嬉しい。
ただ、嬉しい。ようやく遥は思い出すことができた。
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