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【16】SIDE三井遥(6)-1 ※R18
初めて蓮見に触れられた日、遥はどうすればいいのかわからなかった。
よく晴れた土曜日の午後、にぎわう展示場の玄関前で新規の来店対応をしていた。別府に言われて事務所に戻ると、そこに蓮見がいた。
蓮見はただ、会いたかったから来たと言った。その時の嬉しさを、とても全部は言葉にできない。
蓮見ともっと一緒にすごしたいと思い、食事に誘った。ずっとタイミングが合わず、一度も機会を持てずにいたから。
好きな人と一緒に食べるなら、鍋がいいと思った。
鍋は、一人ではつまらない。
アパートは寮から近い。蓮見に来てもらえばいいと思った。
寮の近くで待ち合わせ、遥の部屋に来てもらった。食事をして、仕事の話をして、鍋の話になると、鍋は締めのうどんが最高なのだと蓮見が言った。最後にうどんやご飯を楽しむために、そのほかの具材はある。肉や魚や野菜は前座のようなものなのだと。
ほとんど何もなくなった鍋の中を、短い麺まで探して掬う。
食事が終われば帰ってしまうのかと思うと寂しくて、もっと何か食べるかと聞いた。
大丈夫だと笑った蓮見が、もう少し飲みたいと言った。
蓮見が手土産に持参した日本酒はすっきりとした辛口で、上棟式だったか地鎮祭だったかでもらったものだと言っていた。
家を建てる際には神様に安全を祈願する。完成前の家は壁も床もない高所で作業をするので危険を伴う。建った後もその建物に事故や不幸が寄り付かないようにと願う。
すっかり簡素化されて、地鎮祭や上棟式を行う施主も少なくなったが、施主が希望しない場合でも、現場では必ず塩と酒で土地を清めてから工事に入る。
土地の神に、その地に人の手を加える咎の許しを得、ここで暮らす人に末永く加護があるようにと願う。
日本酒にバケットという組み合わせに、蓮見は笑った。けれど、食べてみると意外に合うと言って喜んだ。
「日本酒と白ワインは味が似てるって姉貴が言ってた。飲んべの言うことだから当てにならないけど」
蓮見には姉と妹がいるらしい。
(長男なんだ……)
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