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【16】SIDE三井遥(6)-2 ※R18
互いに好きだと気持ちを伝え合い、受け入れ合う。けれど、それだけではずっと一緒にいることはできない。
壮介の期待に応えられなかった遥と違い、蓮見は女性を愛せる。血を残し家を守る結婚が可能だ。
諦念は、まだ手の届くところにあった。
「……じゃあ、おうちを継がないといけないね」
遥は言った。
蓮見は笑って首を振る。
そんなたいそうな家ではないと言い、普通の勤め人だ、継いで守るような家督も財産もないと言った。
「だから、恋人が同性でも何も問題ない」
遥は驚いて顔を上げた。
「三井さんは、兄弟いるの?」
「弟が、一人」
その弟に、遥は会ったことがなかった。
この先会うこともないだろう。
遥がウエストハウジングに入社した頃、どこで聞きつけたのか宗森家の弁護士が訪ねてきた。財産について、遺留分放棄の生前申し立てをするよう、遥に要求するためだった。
その弁護士が教えた。壮介が迎えた後妻に男子が生まれたと。
「三井さんに似てる?」
「わからない。まだ、小さ……」
最後の言葉は、いつの間にか隣に来ていた蓮見の唇に閉じ込められた。
何度か優しく啄まれ、唇を開く。熱い塊が口内に忍び込む。遥の舌を舐める。
全部教えて。
そう訴えるように口の中を全部舐める。
畳の上に倒されて、髪や頬にも口づけられた。
「三井さんが、好きだ……」
囁きながら、蓮見は指を遥の服にかけた。
一つ一つボタンを外され、押し上げられたシャツの下で肌が露わになる。膨らみのない平らな胸を蓮見の手のひらがゆっくり撫でた。
どう受け入れればいいのか、何もわからなかった。
身体を開かれるのだとわかっても、遥には知識も経験もなく、心の準備もできていない。
それでも、蓮見が欲しかった。
ただ、触れてほしい。近くにいてほしい。遥を離さないでほしいと願った。
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