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【16】SIDE三井遥(6)-8 ※R18

 雨の月曜日。  その日も所長会議に同行し、終了後に別府とともに営業部長室に呼ばれていた。  先に新井が入室したが、すぐに済むからと言われ、ドアの外で待っていた。  事前の会議の中で、半年間契約がないためいったん正社員としての資格を失う者の一人に、新井の名前が挙がっていた。彼らは基本給なしのフリー契約社員として実績を上げれば、元の地位に戻ることが出来る。  ただし、新井については、解雇に該当する業務上の背任行為の疑いがあり、自主的な退職願を提出するよう勧告があると聞かされた。  新井が部長室に呼ばれたのは、そのためだろう。  突然、勢いよくドアが開き、顔を紅潮させた新井が出てくる。 「なんで退職願なんか書かなきゃなんねんだよ!」  酒でも飲んでいるのか、大声で怒鳴った新井はそばにあったカタログスタンドを力任せに蹴り倒した。  ガタンと大きな音が響き、悲鳴が上がる。 「ふざけるな! ふざけるなよ! 俺を誰だと思ってるんだ! 俺が何年この仕事をやってきたか、おまえらわかってんのか!」  何事かと人が集まる。会議後で営業所の所長たちがまだ社内にいた。雨で事務所に戻った監督たちの姿もある。  ふだんより社内の人の数が多い日だった。 「何をしている!」  人の壁を割って、西園寺が新井の前に現れた。  再びカタログスタンドを蹴り上げた新井が、スタンドの転がる先に立つ遥に気付き、顔を見据えてくる。  へっと短く笑って、口の端を上げる。 「おい。何、見てんだよ。二期連続営業成績一位の三井遥さまよぁ。俺がクビになるのが、そんなに面白いか」  ふらふらと遥に近付き、奇妙に淀んだ眼で下からねめつけた。 「綺麗な顔だよなぁ。俺が何も知らないと思ってすかしてんじゃねえぞ。男娼上がりの淫売のくせによ!」  ザワリとまわりの空気が揺れた。  男娼という言葉に、いったい何を言っているのかと遥は眉をひそめた。  新井は喚き続ける。遥をインフィニティにいた男娼だと言い、身体を使って営業しているのだと言った。

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