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【17】SIDE蓮見(11)-3

「自分が生きていていいのかどうか、自分で決めかねて……」 「どうしてそんなことを……」  死ぬ可能性のほうが高い。  そして、実際、美作優一は亡くなっている。 「生きていることが、苦しかったんだと思う……」  西園寺の言葉に、神様も静かに目を伏せた。  三井の話をする前に必要なことだからと、西園寺が続ける。 「優一は完全なゲイだった。女性とはダメだったんだよ……。俺みたいなゲイ寄りのバイと、優一みたいなタイプでは、生きにくさが全く違う……」  同性間の恋愛の中でどちらかが家庭や子どもを持ちたいと望んだ時、バイセクシャルの者たちは同性の恋人と別れ、異性と結婚して家庭を作ることができる。一般的に「普通」とされる「幸せな人生」を生きることができる。  完全な同性愛者にはそれができない。相手の幸福を願いながらも、深い孤独の中で絶望を味わう。  神様がぽつりと呟く。 「そのことを、僕たちは十分わかっていなかった」  優一の、本当の苦しさに寄り添えていなかったのだと、建物の中に視線を巡らせながら続けた。 「何も、わかっていなかった……」  蓮見も室内を眺めた。  木があり、火があり、土があり、金属のパイプと階段があり、水が流れる。  隠れるように置かれた、把手のない扉。  腑に落ちるものがあった。 (ああ。それで、この建物なのか……)  優一にとってここはシェルターだったのだろう。  自分を守るための世界。 「この店は、三井さんとどんな関係があるんだ?」 「遥は、兄と同じ場所に倒れてたんだ」  美作優一の死から、ちょうど三年後の同じ日だったという。 「見つけたのは、雨の日だったけど……」  零度近くまで下がった気温の中、着ているものは薄いシャツにカーディガンのみ。靴も履いていなかったという。  そのまま気付かなければ、優一と同じように凍死していただろうと。  無理に動かすよりも体温を上げて栄養を取らせたほうがいいと、二人は判断した。それが正しかったかどうかはわからない。 「ていうか、ダメだよね」  神様が肩をすくめる。西園寺を少し睨み「素人考えで、遥を死なせてたかもしれないんだから」と続けた。 「それでも、自分たちの手で遥を生かしたかったのかもしれない」

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