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【18】SIDE三井遥(7)-1
【18】 SIDE三井(遥) 7
何かを決めて出てきたわけではなかった。
インフィニティにいたと新井に言われ、男娼あがりの淫売と罵られた。その新井を蓮見が殴った。
それだけで、遥の中で何かが壊れた。
宗森家で育ったこと、三井家ですごした一年弱の日々、逃げていた数日間のこと、インフィニティで守られるように隠れていた日々、それらをどこか深い場所に封じて、新しい場所を見つけてきたつもりだった。
幸福の箱を売る。
いつか蓮見が口にした言葉を支えに、仕事を通して自分の居場所を見つけられたと信じていた。
生きていていいのだと、生きることが嬉しいと、ようやく思えるようになった。
けれど、その気持ちは遥が思うよりずっと不安定なものだった。一番根っこの部分で遥はまだ呪われたままだ。
その呪いを遥は見落としていた。
遥から全てを奪い、梓を死に追いやった呪い。
異性を愛せない。
何もこの世に残せない。壮介が言ったように遥の存在には意味がないのだ。
蓮見は違う。
――三井の今の男か。
新井の言葉を耳にした時、遥の呪いを蓮見にまで背負わせてはいけないのだと気付いた。
積み上げたものが、また足元から崩れた。
コンビニの先の駐車場にクルマを停め、いつものようにアパートに足を向けた。
男娼上がりという新井の言葉を、蓮見がどう受け取ったのかはわからない。遥は自分のことを話せなかった。形を持たない遥の過去に、蓮見がそんな人生を当てはめてもおかしくないのだ。
それで遥を嫌いになったとしても、おかしくない。
このまま会えなくなっても仕方がないのだと、自分を諦めさせた。
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