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【20】SIDE蓮見(13)-5 ※R18
どうして、そんなことを言う。
怒りに似た感情が渦巻く。
なぜ、そんな泣きそうな顔をして、自分以外の誰かを選べなどと……。
悔しさと憐憫、焦燥とがないまぜになり、蓮見の胸を悲しみが覆った。
血だらけで床に転がる新井を、底のない闇のような目で見下ろしていた。あの時、三井は西園寺と同じようなことを考えていたのだろうか。
蓮見は「普通の」幸せを望むことができる。いつか、三井の前からいなくなる。そんなふうに考えて、その時が来たら自分は身を引こうなどと考えたのか。
「そんな……」
「あ、あ……っ」
「そんなに、簡単に……」
自分を諦めるな。蓮見の手を離すな。もっと、欲しいと願え。そう訴えたかった。
蓮見が三井を欲しがるように、欲しがれと。
「ああ、あ……っ、はす、み……っ」
容赦なく腰を打ち付け、半分萎えてしまった三井自身を右手で煽り、追い上げる。
「あああ……っ」
悲鳴のような声で鳴かせながら、無理やり官能の高みに押し上げた。叫ぶような嬌声が浴室の壁にこだまする。
どんなに抱いても足りない。
三井が自分のものにならない。
「そんな、バカなことを言うために、わざわざいなくなったのか」
「だ、ああ……、だい、大事なこと……、あ……、ちゃんと……」
考えたかった。
嬌声の合間に三井が告げる。
「全然、大事じゃない! そんなの……、なんの、意味もない……!」
「ああ……っ!」
意味がない。
蓮見は繰り返す。バカだと、必要ないことだと、告げる。
けれど、一方で、そんなことを言わせたのは自分なのだと思っていた。
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