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【21】SIDE三井遥(8)-5

「そろそろ一緒に暮そう」  夏の夜風を部屋に入れながら、蓮見が言う。  梓の墓から戻った直後は、周囲の目が遥に向いていることを理由に、少し待ってほしいと告げていた。その時ですら、「自分は気にしない」と言った蓮見に、遥は笑って言った。 「雨の中に、わざわざ傘も持たずに出ていく必要はないんじゃないの?」  いつか、蓮見が西園寺に言った言葉だ。  正しいことを正しいと言い切る真っ直ぐさと、不要な争いを望まない柔軟さが矛盾なく共存する。蓮見の真っ当な精神を、遥はいつも眩しく思う。  蓮見が信じろと言うのなら、永遠を信じることさえできる気がした。  そうめんの器にネギとミョウガを散らして、どこかで鳴くコガタコオロギのギイギイという声を聞く。 「谷さんと、ケンカしないって約束するなら」  遥の言葉に「あれは……」と蓮見が口を尖らせる。 「あれは、谷さんが……」 「知ってるけど、仕事の上でお世話になる人と、うまくやれないんだったら、ダメだよ」  蓮見は神妙に頷いた。 「わかった。もう一度、ちゃんと話をする」 「うん」 「それがうまく片付いたら、ここに引っ越してくるよ?」 「うん」  その頃には、遥も一つ、勇気を出して足を踏みだそうと決めていた。  その晩も、蓮見は何もしないで遥を抱きしめて眠った。それだけで遥は幸せだった。  言葉にできないくらい、蓮見を好きだと思う。身体だけでも、心だけでも、どんなものでも、蓮見がくれるものなら全部が宝物なのだと思う。  

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