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【22】SIDE蓮見(14)-4

 経験の浅い営業マンに回す大手サイトからの紹介物件を先回りして奪い、不動産部門から勝手に受注を引っ張ってくる。西園寺が新井の所業を数えあげる。 「調子のいい口約束をして、後からトラブルになることも多かった。客の家で粘って無理やりハンコを押させたこともあった。まぁ、昔からクレームには事欠かないやつだったよ」 「思ったより、ひどいな……」 「まあな。ただ、それでも、七年いられたんだ。内容はともかく、数字だけは上げてたってことだ」  建築や不動産の営業は昔から泥臭い。同じ客がリピートすることが少ないため、売ってしまえばそれっきりというやり方でも続けられる。 「だけど、もう、そういう時代じゃなくなったからな」  情報の共有が昔とは比べものにならないほど進んでいる。内容は玉石混交だが、何も材料がないよりいい。手探りでたった一度の買い物をしていた時代とは明らかに変わったのだ。  同じ客のリピートはなくても、評判そのものは拡散される。いいことも悪いことも、簡単に書かれる。 「原って客を覚えてるか」 「階段のか……?」 「ああ」  原は、SNSで新井を名指しで悪く言っている。ウエストハウジングの名前も出されて叩かれているため、総務でチェックしていると西園寺が教えた。 「いいか悪いかは別にして、世間の目みたいなもんが復活した感があるよな」  SNSやネットの掲示板と聞くと、どうしても三井にまつわる不愉快な書き込みを思い出す。蓮見は、鼻に皺を寄せた。 「流されやすい、無責任な世間様か」 「それでも、全体的に見れば、世間様っていうのは、案外まともな方向に向かっていくもんだ」  西園寺を別れて席に戻ると、谷が声をかけてきた。 「蓮見、おまえ……。寮を出て、近くのアパートに引っ越すってほんとか?」 「ええ。その予定です」  谷は眉を寄せた。いかつい顔に困惑が浮かぶ。  それがどうかしたのかと思っていると、歯切れの悪い言葉が続いた。 「おまえ……、まさかと思うけど……。前に新井さんが言ってたのって、冗談だよな。おまえが、その……、三井さんと……」  ――三井の男か。  谷が何を聞きたいのかわかった。

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