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【22】SIDE蓮見(14)-5

「もし、そうだったら、何か問題があるんですか」  蓮見の答えを聞き、谷が顔の前で手を振る。 「バカな話はよせよ」 「バカな話って、何ですか?」  谷の目をまっすぐ見据えて聞いた。 「蓮見……」  マジかよ、と谷は頭を抱える。 「やめとけよ」 「なんでですか」 「なんでもクソもあるか。おまえ、普通に女の子と付き合ってたじゃないか。なんでわざわざ五つも年上の男を選ぶんだよ。興味本位で付き合ってるなら、さっさと別れとけよ。ヘンな噂もあるし……」  谷の言葉でも許せなかった。 「興味本位ってなんですか? ヘンな噂って、なんなんですか。あんな嘘を信じて、いったいどういう……」 「蓮見……!」 「三井さんがどんな人か、谷さんも、知ってるはずですよね?」 「仕事の上では、知ってるよ。すごい人だと思う。だけど、おまえ……。ああいうタイプの人間と付き合うのは……」 「ああいうタイプの人間? なんですか、それ」 「つまり、あれだよ。三井さんは、いわゆるゲイなんだろ? おまえとは違う……」 「違いません」 「だけど、おまえは……」 「谷さん」  立ち上がった蓮見は、ほとんど睨みつけるように谷を見下ろした。 「違わない。俺と、あの人は何も違わない。俺は、ただ普通に、あの人のことが好きなだけです」 「蓮見……、落ち着け」 「落ち着いてます」 「いい加減にしろ。おまえ、まだ若いから……」 「うるさいっ!」  椅子を蹴るようにして、その場を離れた。

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