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【22】SIDE蓮見(14)-9
(でも……)
蓮見は思う。
今、目の前で仕事の話をしている三井を、神様に見せてやりたいと……。
神様や西園寺が思うよりも、三井はずっとしなやかで強い。自分に自信も持っている。
蓮見は、いつか建てる三井と自分の家にもハナミズキを植えようと思った。
中庭ではなく、家と外との間の庭に。世界との間に。空に高く枝を伸ばして花を咲かせる姿を、三井と一緒に見ようと思った。
異性を愛せるか。
あるいは、同性を愛せるか。
どちらも、大した違いはない。気にすることはないのだ。
大切な人がいて、その人のそばでずっと生きてゆきたいと願う。それが全てでいい。それで十分だと思う。
相手の性別も年齢も国籍も人種もほかの何もかも全部、関係ない。好きだから一緒にいる。一緒に生きてゆく。
当たり前のこと。
その夜も三井は蓮見を求めなかった。抱いてほしいと言われるまで、蓮見からは触れない。宣言した通り、蓮見は約束を守っている。
だが、触れたい相手を腕に抱いて欲望に耐える日々は、もはや一種の苦行だった。誰が褒めなくても自分を褒めてやりたいと思う。
身体を重ねない日々の中で、簡単な引っ越しを済ませ、蓮見は三井の部屋で一緒に暮らし始めた。
一カ月半を超える禁欲生活の中で、蓮見は何度か三井に聞いた。
「身体が目的じゃないって信じた?」
蓮見の腕の中で、三井はただ笑うだけだった。
先は長い。
覚悟を決めて、自分を鼓舞するしかなかった。
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