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【23】SIDE三井遥(9)-3 ※R18
なのに、気づかず、一人で勝手に考えたことを蓮見に言ってしまった。いつか蓮見の心が遥を離れ、どこかに行ってしまうとしても、それまででいいなどと、バカなことを口にした。
遥は考え過ぎるのだ。
一度深く傷ついたことは、言い訳にならない。蓮見がまっすぐに差し出すものを、まっすぐな気持ちで受け取ればよかったのだと、今さらながら気付く。
蓮見がいつもそうするように。ただ、手を伸ばしていいのだ。
空に伸びるしなやかな樹木の枝。
よく笑う、優しくて背の高い青年。遥の知っているたった一つの愛しい身体。
その内側に宿る、自然の光にも似た明るい魂。
遥を救う光。
蓮見がくれる全てを、ただ歓びとともに受け取ればいい。それを失う日がきたとしても、その時には、きっと遥は生きられないのだから。命が尽きる瞬間まで、永遠を信じればいい。
八時に帰宅すると、スーツから部屋着に着替える間に、蓮見が手早く素麺を用意してくれた。
あまり料理をしてこなかったという蓮見だが、手早く作れる具材付きのたれやソースを見つけてくるのが上手で、この日も四川風のピリリとした味付けの素麺に、ちぎったレタスとスライサーで薄く切ったきゅうりを添えて、ざっくりとテーブルに並べてゆく。
向かい合って、それを口に運ぶ。
「美味しい」
「うん。こーゆうの、便利だよな」
冷たい麦茶をゴクリと飲んで、蓮見がにこりと笑った。
「それで、願いごとって何?」
「うん。お風呂の後でもいい?」
「別に、いいけど。ずいぶんもったいぶるな」
ふふ、と遥も笑ってみせた。
食事が済むと「俺は、今、休みだから」と言って、後片付けも蓮見が引き受けてくれた。
「風呂もすぐに入れるよ。汗をかいたから、俺は先に済ませた」
「ありがと。じゃあ、もらうね」
蓮見の背中を見ながら、浴室の扉を開けた。小さな湯船に身を沈め、騒ぐ心臓を宥めて息を吐く。
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