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【23】SIDE三井遥(9)-4 ※R18
初めて抱かれた日よりも緊張しているかもしれない。甘く疼く下肢をそっと宥めて、もう一度息を吐いた。
夏のパジャマを身に着けて居間にしている部屋に戻ると、開け放った襖の向こうに、すでに布団の敷かれた寝室が見えた。
「それで、何?」
籐のカウチの隣を空けて、蓮見が聞く。遥はそこに腰を下ろさず、いつもと違って低い位置にある蓮見の顔をじっと見つめた。
「どうした、遥?」
「蓮見……」
「うん?」
優しく手を取って、蓮見が促す。
遥は息を深く吸った。ゆっくりと吐き出し、最後に小さく囁く。
「蓮見が……、欲しい」
ガタっと勢いよく、蓮見がカウチから立ち上がった。
「遥……」
つないだ手を引っ張られ、きつく抱きしめられる。
「もう一度、言って」
「え……」
「いや。やっぱり、いい。俺は、もう聞いたからな」
顎を救われ、言い直しは認めないというように、唇を塞がれる。深く差し込まれた舌に口の中をかき回される。遥が知っている蓮見のキス。
優しいのに情熱的な、蓮見そのもののようなキスに、眠っていた官能が呼び覚まされてゆく。
高い位置にある首に腕を回して、もっと、とねだるように遥も舌を絡めた。
「すごく我慢してた。めちゃくちゃにするかも……。覚悟して」
掠れた声で囁かれ、騒ぐ心臓を押さえて頷く。
蓮見になら何をされてもいい。どんなにめちゃくちゃにされても、いいのだ。蓮見の指や手のひら、唇、それらに触れられるだけで、いつだって遥はおかしくなるのだから。
細胞のひと粒ひと粒がキラキラと輝いて、別の生きものに変わってしまうのだ。
「めちゃくちゃにして……。蓮見で、僕を、いっぱいにして……」
「あぁ、もう……っ。なんなの、遥……っ」
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