196 / 207

【24】SIDE三井遥(10)-1

 明け方近くまで繰り返し抱き合った後で、短い眠りに落ちた。  目が覚めると蓮見の腕の中にいた。身体はすでに清められていて、蓮見のパジャマの上だけを身に着けている。 「家で、話したよ」  遥を抱いたまま蓮見が呟き、ゆっくりと目を開ける。 「なんて言ったの?」 「遥のこと?」 「うん」  さすが痺れたのか、遥の頭の下からゆっくり腕を引き抜き、一度大きく伸びをしてから、改めて身体を横にして蓮見が遥の目を覗き込んでくる。 「真面目で、優しくて、仕事ができて、頭がよくて、めちゃくちゃ綺麗な人だって言った。いくらなんでも惚気(のろけ)すぎだって笑われたよ」 「惚気すぎっていうか、褒めすぎ」 「そう?」  単なる事実だけど、と笑う蓮見は、遥の性別を家族に話さなかったのだと思った。 「今度連れてこいって言われたから、次に休みが重なったら、うちの家族にも会ってくれる?」 「……大丈夫かな?」 「最初は、多少驚くかもしれないけど。でも、反対はしないと思う。姉貴と妹に至っては、下手すると大喜びする」 「大喜び?」  伸びてきた髭を確認するように顔を擦り、蓮見はため息を吐いた。 「あの二人、腐女子なんだよ」 「ふ……?」 「ひょっとすると、おふくろもかも……」 「え、そ……、そうなの?」  遥はしばし、言うべき言葉を見失った。 「だから、何か聞かれても適当に躱せばいいから」  うんざりした声で言われて、取りあえず「わかった」と頷いた。世の中には、いろいろな状況に直面する機会があるものだ。

ともだちにシェアしよう!