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【24】SIDE三井遥(10)-1
明け方近くまで繰り返し抱き合った後で、短い眠りに落ちた。
目が覚めると蓮見の腕の中にいた。身体はすでに清められていて、蓮見のパジャマの上だけを身に着けている。
「家で、話したよ」
遥を抱いたまま蓮見が呟き、ゆっくりと目を開ける。
「なんて言ったの?」
「遥のこと?」
「うん」
さすが痺れたのか、遥の頭の下からゆっくり腕を引き抜き、一度大きく伸びをしてから、改めて身体を横にして蓮見が遥の目を覗き込んでくる。
「真面目で、優しくて、仕事ができて、頭がよくて、めちゃくちゃ綺麗な人だって言った。いくらなんでも惚気 すぎだって笑われたよ」
「惚気すぎっていうか、褒めすぎ」
「そう?」
単なる事実だけど、と笑う蓮見は、遥の性別を家族に話さなかったのだと思った。
「今度連れてこいって言われたから、次に休みが重なったら、うちの家族にも会ってくれる?」
「……大丈夫かな?」
「最初は、多少驚くかもしれないけど。でも、反対はしないと思う。姉貴と妹に至っては、下手すると大喜びする」
「大喜び?」
伸びてきた髭を確認するように顔を擦り、蓮見はため息を吐いた。
「あの二人、腐女子なんだよ」
「ふ……?」
「ひょっとすると、おふくろもかも……」
「え、そ……、そうなの?」
遥はしばし、言うべき言葉を見失った。
「だから、何か聞かれても適当に躱せばいいから」
うんざりした声で言われて、取りあえず「わかった」と頷いた。世の中には、いろいろな状況に直面する機会があるものだ。
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