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【24】SIDE三井遥(10)-2

 盆休みの間は、遥の休みが一日だけなので無理だが、どこかで休みを合わせて墓参りにも行こうと蓮見は言った。  七月に別府に告げ、先日正式に受理された退職の話を遥はようやく口にする。 「九月までで辞めるの? なんで?」  身体を起こして蓮見が聞いた。  新井の言葉に端を発した一連の不愉快な噂話は、すでにすっかり忘れ去られて平和になっている。蓮見が驚くのも無理はなかった。 「大学に、行こうと思って」  遥も起き上がり、蓮見と向かい合って座る。 「大学? 今から?」 「うん」  もう遅いのかもしれないし、何も意味などないのかもしれないが、苦しい日々の中で最後まで梓が願っていたことを、せめて一つでも叶えたいと思っていた。  正式な手続きを取らないまま学費を滞納し、姿を消した遥に、以前の大学に戻る資格はおそらくないだろう。受験からやり直すことになるので、およそ十年の回り道になる。  それでも、遥の学力を認め、何か人の役に立てるようにしっかり学んでほしいと願っていた梓に、少しでも報いることができればと考えて、数年前からコツコツ準備を進めてきたのだ。 「二、三年前から考えてたんだ」  ちょうど、蓮見と坂本がコンビニの駐車場で話しているのを聞いた頃だ。枯れてしまった古い木の株から、春に新しい枝が芽吹くように、遥の中に生きる意欲が芽生え始めた。 「その頃から、少しずつお金を貯めてた」 「ああ。それで」  蓮見が何やら大きく頷く。 「それでって?」 「いや。それで、あんなに節約していたのかと思って」 「え? 節約してたのわかった? 僕って、そんなにケチだった?」 「ああ、そういうんじゃないけど。あんなにって言うか……、遥はあれだけ家を売ってたのに、別府所長やほかの営業みたいな高そうなクルマを買ったり、時計やスーツに贅沢したりしなかっただろ。だから、下世話なことだと思いながらも、何に金を使ってるのかなぁとは思ってたんだよ」  わりと謎だったのだと言われて、遥は顔を赤らめた。

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