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第6話

それまで着ていたシャツに点々と血がついていたため、永久が用意したものに着替えた。 いや、着替えさせられた。 足首の包帯に注意しながら、永久が用意したブーツに足を入れる。 教えてはいないがサイズはぴったりだった。 「ちょっ!」 手首を強く掴まれて引っ張られるまま部屋を出た。 永久は一度も振り返らない。 屋敷を出るまで会話はなく、久遠が残してくれた記憶を手繰って空を見上げた。 「行くぞ」 直後、膝の裏に腕が入り、抱き上げられる。 「落ちないように、しっかり掴まっていろ」 そう言うと、ふわりと永久の身体が宙に浮いた。 (と・・・・・・飛んで・・・・・・る!!) 反射的に大翔はぎゅっと彼の首にしがみ付く。 「・・・・・・大翔」 小さく彼が名前を呼んだ瞬間、周囲から音が消えた。 風の音も、鳥の声も・・・・・・ 水の音も聞こえない。 二人は真っ白な世界にいた。 (なにもねぇ・・・・・・) 大翔はギュッと目を瞑った。 とくん・・・・・・ とくん・・・・・・とくん・・・・・・・・・・・・ 暫くして、心地よい音が耳に届けられた。 とくん・・・・・・ とくん・・・・・・・・・・・・とくん・・・・・・・・・・・・ 温かな風が身体を包み込んだ。 とくん・・・・・・・・・・・・とくん・・・・・・・・・・・・・・・・・・ とくん・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「大翔」 すぐ耳元で永久が呼んだ。 びくっと大きく肩を震わせて目を更にギュッと瞑る。 「もう目を開けてもいい・・・・・・着いた」 彼の声はとても優しい響きを持っていて、大翔はそれまで詰めていた息をホッと吐き出して目を開けた。 そっと足を下ろされて、自分の両足で地面に立つ。 (・・・・・・何処だ?) 自分達を取り囲むのは草木ばかり。 そして、目の前に大きな洞窟がぽっかりと口を開けていた。 「行くぞ」 くっと腕を引っ張られて、二人は洞窟に向かって進む。 外の明かりが届く位置まで中に入り、永久が足を止めた。 「水島!ここへは久遠に教えてもらって来た。俺が永久で、こいつが大翔だ」 永久の声が洞窟の中で反響している。 キキキッと一匹の蝙蝠が中から飛び出してきて、大翔はビクッと大きく肩を震わせて永久の背中にしがみ付いた。 「久遠さんから聞いてるよ・・・・・・そのまま入ってきて・・・・・・今、ちょっと手が離せないんだ」 その蝙蝠はパタパタと二人の頭上を飛び回る。 「んじゃぁ、邪魔すんぞぉ」 背中にしがみ付いている大翔を引き剥がし、腰に腕を回して抱き寄せられる。 「歩き辛ぇから、こっち」 (いや、そうすると俺が落ち着かない・・・・・・・) 行き場のなくなった手で自分の両腕を抱き締める。 足元はゴツゴツしていて歩きにくく、転びそうになる度に永久は大翔を腕の中に引き寄せた。

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