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第9話

空は何処からともなく現れた暗雲が覆い尽くし、稲妻が大地に降り注いだ。 突如として大都会の真ん中に出現した黒き城より、溢れ出た魑魅魍魎が人々を襲う。 彼は漆黒の髪を靡かせながら、街並みを高台から見下ろしていた。 その口元には不敵な笑みが浮かんでいる。 「これよりこの地上は、我がザン・コーク帝國が支配する・・・・・・貴様ら人間はこの帝王サイアークに忠誠を誓い、死ぬまでザン・コークのために働くのだ!」 黒き城から主の声が響き渡る。 彼は、コツッと踵を鳴らした。 「我が名はパンドラ・・・・・・帝王サイアーク様に仕える四将軍の一人」 彼の背後には、地下から続々と魑魅魍魎が這い出してきていた。 「無駄な抵抗は止めて、我がザン・コーク帝國に忠誠を誓え!」 パンドラと名乗りを上げた彼は、腰から剣を抜いた。 柄から切っ先まで漆黒の剣、『黒牙』を逃げ惑う人間達に翳し・・・・・・ 「貴様らの血を我に捧げよ!行け!」 背後に溢れた魑魅魍魎に向かって叫んだ。 「そうはさせないぞ、ザン・コーク!」 パッと暗雲に一本の光が差し込む。 「この地上は俺達が守る!」 更にもう一本は地下から光が突き出した。 「貴様らザン・コークの野望は俺達が打ち砕く!」 その中央にもう一本、光が降り・・・・・・更に両サイドに二本。 光の柱の中で人の形が形成され、バトルスーツに身を包んだ戦士達が、各々の決めポーズと共に現れた。 「何者だ?」 パンドラの『黒牙』の切っ先が彼らに向けられる。 「俺達は・・・・・・」 華激戦隊オリンピア!! 「・・・・・・っとまぁ、初回はこんな感じでタイトルが表示されます」 編集したて、ほやほやの映像を見て、パンドラ衣装のまま、大翔はほぉっと感心の溜息を漏らした。 「主題歌のバックでのヒロちゃんの高笑い、サイコーだよね・・・・・・」 「え?あ、ありがとうございます」 破壊されていく街を見下ろしながら、悦に入った表情で笑うパンドラ。 世界を守るために現れた正義のヒーローを虫けら扱いし、その圧倒的強さを見せ付ける。 「破壊が楽しくって仕方ないって顔・・・・・・いいねぇ・・・・・・ゾクゾクしたよぉ・・・・・・俺、ヒロちゃんになら踏まれてもいいかなぁ」 「さ、笹川さん・・・・・・あの、役ですから?パンドラですからね?俺個人にそういう趣味はありませんからね?」 引き攣った笑みを返し、大翔は席を立った。 「えっと、そろそろ時間なんで、スタジオに戻りますね」 大翔は笹川から逃げるように、マントを翻して部屋を飛び出した。 「ほんと可愛いなぁ・・・・・・それにしても、これが初めての演技だなんて信じられないよ」 カメラ目線のパンドラと目が合い、ゾクゾクッと背筋が震え上がった。 「僕の目に狂いはなかったなぁ」

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