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第17話
人通りの少ない路地裏。
表通りのネオンが届かない、薄暗い場所で2人は抱き合っていた。
「・・・・・・も・・・・・・だっ・・・・・・めぇ」
抱き締めていた女の体から完全に力が抜けた。
吸い付いていた首筋から顔を上げる。
彼の瞳は真紅に輝いていた。
「・・・・・・不味っ」
唇の端から顎を伝う鮮血を手の甲で拭うと、ぐったりと動かない彼女を肩に担ぎ上げた。
とんっと地を蹴り、ビルの屋上に飛び上がる。
「今夜のは外れだな」
腹は膨れたが・・・・・・
この街で一番大きな病院に向かって溜息を吐き出した。
くんっと鼻を鳴らす。
「ん?」
風がその匂いを運んできた。
「んん?」
くんくんっと匂いの元を探る。
(この匂い・・・・・・)
ふっと笑みが浮かぶ。
とりあえずは、いつも通り、肩に担いでいる女を病院の前に捨ててこよう。
匂いがする方角をしっかり覚えて、彼はビルから飛び立った。
「・・・・・・はぁ」
マントの先を握り締め、腕の中で気持ちよく眠っている人物を見下ろし、小さく溜息を零す。
(どうせ覚えてねぇんだろうなぁ)
ベッドの端に腰を下し、眠っている大翔の髪を梳いた。
(満月の魔力に酔っただけだろうねぇ・・・・・・って久遠が言ってたけど)
期待してはいけないと釘を刺された。
眠る大翔の首筋に穿たれた牙の痕に指を這わせると、何も無かったかのように傷口は綺麗に塞がった。
ゆっくり大翔をベッドの横たわらせて、その手からマントを離させる。
小さく唸ったものの、覚醒には至らなかった。
「大翔?」
小さく彼の名前を呼んでみた。
もちろん返事はなかったが、少しだけ、見逃しそうなくらい僅かだったが、表情が優しくなった気がする。
「・・・・・・お前が目覚めるまで一緒にいてもいいか?」
早く元通りになればいいのにと願いながら、永久は大翔を抱き締めた。
東の空が薄っすらと明るくなって来た頃・・・・・・
目覚まし用にセットしておいた携帯が音楽を奏で始め・・・・・・
腕の中で身じろいだ大翔に気付いて、永久はそっと彼から離れた。
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