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第23話

コンコン・・・・・・ 突然のノック音に大翔が息を飲んだ。 「いちゃいちゃしてるところ悪いんだけどぉ、永久くん、ちょっといいかなぁ?」 控えめに声を掛けてきたのは久遠だった。 (ちっ) 心の中での舌打ち。 (いちゃいちゃ?) 大翔は、今の声が久遠のものだと気付いていないようだ。 「すぐ戻るから」 耳元で囁いて、その耳にキスを落とした。 「ばっ!!!」 永久の手を振り払ったと思った瞬間、そこに彼の姿は無かった。 「あ・・・・・・れ?」 部屋の中に永久の姿は何処にも無い。 扉を開けて出て行った気配は全くしなかったというのに・・・・・・ 「永久?」 ゆっくりと上体を起こした。 ベッドの上でぐるっと部屋の中を見回し、床に足を付く。 ぐるぐるに巻かれた包帯を見下ろす。 薬が効いていて痛みはない。 (・・・・・・俺、なんで怪我してんだっけ?) そっと包帯に触れた瞬間、フラッシュバックを起こした。 普段どおりアパートへ帰宅する道中で・・・・・・突然声を掛けてきた男に、普通の人間とは思えない怪力で吹っ飛ばされた。 男の手には何も握られていなかったのに、大翔の足に向かって振り下ろした瞬間、その足から鮮血が噴き出した。 (体中が痛くて、息が出来なくなって・・・・・・そいつの目は赤く光ってて・・・・・・殺されると思ったんだ) 男は大翔の背中を踏みつけ、キリキリと、内臓が押しつぶされそうで・・・・・・ 殺されると覚悟した瞬間、長い銀髪の男が現れて、男をふっ飛ばし、大翔を逃がした。 助けてくれた男には見覚えがあった。 「・・・・・・あいつ・・・・・・は」 ぽそっと呟いた。 「お?ヒロ、もう起きて大丈夫なのか?」 その声は、すぐ後ろで聞こえた。 誰もいなかったのは確認したばかりなのに、だ。 「だっ、誰!」 ぎょっと振り返ると、そこには・・・・・・ 「え?永久?」 先程の服装とは違い、なぜかボロボロの衣服を身に纏っている永久。 気のせいか髪も伸びているような気がする。 短時間で一体何があったのか? 「・・・・・・ってか、お前何処から?」 部屋の扉は開閉されていない。 窓も分厚いカーテンに覆われている。 「何処からって・・・・・・っつうか、ヒロ、お前またアレと間違えてんのか?」 しょうがねぇなぁ、とニッと白い歯を見せて笑みを浮かべ、バサバサと髪を掻き乱した。 「あ、あれって?」 (なんか・・・・・・雰囲気が、違う?) ボロボロの衣服の上のシルバーアクセサリーをガチャガチャ鳴らしながら近づいてくる永久を見上げて、大翔は訝しげな表情を浮かべた。 「まぁ、いっか」 大翔を見下ろし、その髪に触れる。 「ふむ・・・・・・これも、Cross of the blood(血の十字架)の呪い・・・・・・のせい、ってやつなのか?」 永久がスッと真顔になった。 「え?」 そのまま、永久は大翔の肩を押し、ベッドに押し倒す。 「随分ややこしい薬を使われたみたいだな?」 「くす・・・・・り?」 (なんのことだ?) 困惑する大翔の首筋に顔を埋めた。 「ひゃっ!」 ぺろっと舐められて声を上げる。 「薬の成分からして・・・・・この効果の持続性は・・・・・・・・・」 「ちょっ、おい、永久!」 身体を捻り、永久の肩を押す。 「お前達より長生きしている俺様でも調べねぇと解らんこともあるさ・・・・・・ま、とりあえず傷は直してやるよ」 ちゅっと大翔の頬にキスを落とし、右手をそっと包帯が巻かれた足に添えた。 「俺様優しいから」 バタンッ!! 勢い良く開け放たれた扉から飛び込んできた永久にギョッとした。 「大翔!」 こんなに焦って余裕のない永久を見るのは初めてだった。 「大翔!」 入口から一直線に向かってくる永久をぼんやり見詰めたまま、大翔は彼に向かって無意識に手を伸ばした。 「あれ?永久?」 「大翔、大丈夫か?」 その手に永久の手が触れる。 そして、違和感。 「さっきまでと手の暖かさが違う・・・・・・さっきは、もっと冷たかったよな?」 いつの間に部屋の外へ出たのだろうか? 急に襲ってきた眠気に身を任せ、目を閉じたあの時まで、永久は自分の側にいてくれたはずだった。 頬に手を当てて、大丈夫だからと・・・・・・ あれからそんなに時間は経っていないと思うけれど・・・・・・ 「あいつに何もされなかったか?」 心配そうに自分を見詰める永久に、疑問を感じながらも大翔は首を左右に動かした。 (あいつって誰?) 永久の手が大翔の身体に触れる。 額に、頬に・・・・・・首筋に、肩に、シャツの肌蹴た胸元に・・・・・・・・・ そして、太ももに伸びて・・・・・・撫で回す。 「永久・・・・・・お前それセクハラだぞ?」

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