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第27話

ポタッ・・・・・・ ポタンッ・・・・・・ポタッ・・・・・・ (・・・・・・血が・・・・・・足りねぇ) ぐったりと伸ばした手首から、鮮血が滴っているのを大翔はぼんやりと見詰めていた。 ガチャッ・・・・・・ その手首には黒い手枷が嵌められている。 下半身はドンッと重く・・・・・・自分のモノではないような感覚で・・・・・・ (・・・・・・動けねぇ) 部屋の中は暗い。 「とっ・・・・・・わ・・・・・・永久ぁ」 この部屋には窓がないのだ。 「・・・・・・とわぁ・・・・・・ふっ・・・・・・とわ」 今が夜なのか、昼なのかも解らない。 どれくらい、こうしているのかも解らない。 心臓の音がうるさいくらい聞こえている。 呼吸は浅い。 視界にはチカチカと星が飛んでいて、ぐらふら揺れている。 (永久・・・・・・どこ・・・・・・?) 部屋の扉が開いたみたいだけれど、そちらに視線を向ける力もない。 カツン・・・・・・カツン・・・・・・ 靴音が近づいてくる。 「お、に、い、ちゃん?」 突然視界に割り込んできた少女は、自分によく似ていた。 けれど、それが誰だか分からない。 「また暴れたの?」 赤色が主なゴシック系のドレスを身に纏った少女の手が傷付いた手首に触れ、指先に付いた血をぺろっと舐めた。 随分と自分の顔に似てるなぁと思ったが、化粧してて、この子は女の子? でも、違和感。 「たくさん血が流れたね」 手首の傷口に直接口を寄せ、血を舐め始める。 「ごめんね、お兄ちゃん・・・・・・でも、まだ足りないの」 上目遣いの、少女の大きな瞳に映り込んだ自分。 「真琴はね・・・・・・Cross of the blood(血の十字架)の呪いから、お兄ちゃんを解放したいの」 少女の唇の端から鮮血が一筋顎を伝って落ちた。 (・・・・・・なに・・・・・・言って、んだ?) 少女の顔が近づいてきて、唇が重なった。 舌が大翔の唇を割って侵入し、少女の血が喉に到達すると、びくんっと身体が跳ねた。 もう、全ての痛覚はおかしくなっていたと思っていたけれど・・・・・・ 「かはっ・・・・・・がっ・・・・・あぁ・・・・・・・・・っ」 全身を駆け巡る激痛に目を見開いた。 「お祖母ちゃんがお兄ちゃんの中に封印した・・・・・・Cross of the blood(血の十字架)」 ガチャガチャと、手枷に繋がっている鎖が音を鳴らす。 「あっ・・・・・・んあ、はっ」 胸が焼けるように熱く、何度も身体が跳ねる。 「がはっ」 吐き出したモノが顔を濡らし、口の中に微かな鉄の味が広がった。 (い・・・・・・き、が・・・・・・) ぐにゃりと視界が歪んで、掠れて、焦点は定まらない。 「大丈夫よ、お兄ちゃん」 「んぐっ!」 真琴の指が喉の奥に突っ込まれ、息が詰まった。 「・・・・・ぐっ・・・んんっ・・・・・・ごほっ」 「真琴が一緒にいるから恐くないよ?」 細かく痙攣し始めた兄の手に頬を添える。 ガチャガチャと手枷の鎖の音が激しく音を立てた。 「真琴の血をあげるから・・・・・・お兄ちゃん、大好きよ」

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