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第40話
「・・・・・・ってわけだから、俺がいない時、大翔に近づく事禁止な?」
知らぬ間に部屋を出て行った永久が戻って来て、いきなりこう宣言された。
「ってわけって、どんなわけだ?」
「え~!なぁんでぇ?」
ソファに座った父親の膝に、なぜか向き合って座っている大翔の双子の弟が不満の声を上げる。
(なんでじゃねぇんだよ!っつうか、お前ら何やってんだよ!)
目の前の2人の格好おかしいよなと誰かに同意を求めたいが、この部屋には自分を入れて3人しかいない。
(親父!てめぇも真琴の腰に手ぇ回してんじゃねぇよ!)
頬の筋肉がぴくぴくと痙攣を起こした。
吸血鬼で、医者で、自称海賊と名乗ろうが実の父親。
(それセクハラだろ)
パッと見は女でも、相手は男だけれど。
「疲れてんだよ、ちょっと休ませてやりてぇから」
言っている事は間違ってない。
大翔は今混乱している。
そして、自分も。
だいたい、なぜ真琴がココにいるのか解らない。
更に、どうして自分の父親と真琴はそんなに仲がいい?
いつの間に?
先程の瞬のテンションも気になる。
未だにべったりくっついたままの2人に向かって盛大な溜息を吐き出す。
(俺達が意識を失う前と目が覚めた後じゃ、なにかが違ってるわけだよな?)
確実に違うのは、この場に大翔の双子の弟である真琴がいること。
逆に、いたはずの水島はいない。
(それに・・・・・・)
大翔の記憶に変化が起こっている。
くしゃくしゃと前髪を掻き乱した。
部屋に残してきた大翔との会話を思い出す。
(知らないはずなのに・・・・・・解る、なぁ?)
真琴が双子の弟である事も、ジャックと名乗る自称海賊な男が永久の父親で医者、本名が源三だと言う事も・・・・・・
瞬が狼男であることも・・・・・・
(・・・・・・俺達が何者であるのか、ってことも)
大翔は動揺していたようだが、怯えてはいなかった。
(最初に拉致って来たときとも違う)
あの時は、目が赤く輝いた自分に向けられた大翔の目は酷く怯えていた。
こちらの声は届かず、ただ拒否されて・・・・・・
「で、永久くん、お兄ちゃんは?」
きょとんっと大きな瞳に覗き込まれて、永久はぎょっと仰け反った。
「部屋で休んでる・・・・・・で、聞きてぇんだけど?」
今のこの状況を説明してくれるのは、真琴なのか、父親なのか?
「何を?」
真琴の艶やかな唇が笑みを作る。
「その前に」
よっこらしょっと立ち上がったジャックは、当初2人を寝かせたはずのベッドの端に腰を下した。
「お前はどうなんだ?」
手招く父親に素直に歩み寄る。
「何が?」
ジャックはジッと永久を見上げた。
「何がって、優しい父親が、バカ息子であるお前の体調を気にしてやってるわけだが・・・・・・ん?頭痛ぇとか、腹が痛ぇとかはねぇか?」
伸びてきたジャックの親指が永久の頬に触れ、ぐいっと目を開かれた。
一度目が覚めた時、記憶が混乱していて大翔を自分が殺したと言った。
永久がダンピールの頃の記憶は消したはずだった。
そして、恐らく、その記憶は今封印されている。
自分が大翔を殺したことがあるなどと思いもしないだろう。
「別に俺は何ともねぇけど・・・・・・」
言ってから、しまったと口を押さえた。
「お前は?じゃぁ、大翔は?」
「お兄ちゃんがどうしたって?」
背後から真琴にくいっと上着の裾を引っ張られる。
「いや、だから疲れて寝てっから・・・・・・」
これは先程も言った。
「だけじゃねぇだろ?さっき様子変だったよなぁ?」
「そわそわしてたわ・・・・・・ねぇ?」
2人の息はぴったり。
永久は観念したように息を吐き出し、大翔の今の状況を2人に説明した。
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