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第45話
「これって出歯亀って言うんだよね?」
水島は背中に乗っている真琴に向かってそう零した。
「でばがめ?」
真琴にとっては初めて聞く単語だった。
「まぁそれは後でジャックに教えてもらったインターネットで検索してみるわ・・・・・・それより」
顔を上げた水島の頭をぐいっと戻して、扉の隙間から見える光景に低く唸った。
「永久くんはお兄ちゃんに何をしてんのかしら?」
何をしているのかだなんて、見れば解る。
永久は大翔を抱き締めているのだ。
きゅっと優しく。
時折耳元で何かを囁き、御互い見詰め合って・・・・・・笑って・・・・・・
(今なら、どさくさに紛れて真琴ちゃんを抱き締めても怒られないよね?)
ちらっと真琴を盗み見る。
(いや、殺されるかな?)
水島は苦笑して視線を部屋の中に戻した。
「いい水島ちゃん、永久くんがお兄ちゃんに変な事したら殺すわよ」
真琴の瞳が怪しい光を放つ。
(僕らはもっとすごいことを大翔くんにしちゃったと思うけど?)
大翔をここから拉致し、自分達の屋敷に監禁。
何度も大翔を殺し、灰にした。
(自分の事はいいの?)
真琴の祖母、いや大翔の祖母でもある破滅の魔女と呼ばれた女性が、自分の持てる全ての力を注いで大翔の何かを封じ込めた。
大翔がどれほどの力を持っていたのかは知らない。
いや、真琴は知っているかも・・・・・・
破滅の魔女とまで呼ばれた真琴の祖母は孫の大翔を恐れた。
その事実は有名で、Cross of the blood(血の十字架)の呪いとして数々の文献に載っている。
血の十字架は大翔の力を封じるが、別のモノが手にすると莫大な力が手に入るとも噂されている。
しかし、この事実は定かではない。
なぜなら、血の十字架は大翔から離れた事はないからだ。
だから、大翔は狙われる。
血の十字架を手に入れるために、大翔ごと攫って行こうと言う輩が多いのだそうだ。
これらは全て真琴から聞いた話。
真琴はそんな大翔を護ろうとし、更に、血の十字架の呪いを解こうとしていた。
大翔を殺し、灰にし、同時に現れるはずの血の十字架を破壊しようと・・・・・・
(呪いを受ける前と後じゃ、大翔くんどこか変わったのかなぁ?)
ついでに、大翔の中から永久の存在を消そうともした。
(真琴ちゃん嫉妬したんだね、永久くんに)
しょうがないなぁ、と再び真琴を見上げる。
「ねぇ、水島ちゃん、ところで、さっき飛び出して行ったのは誰?」
つんっと唇を尖らせた真琴が、水島の頬を両手で包み込む。
「さっき?」
今この場にいないメンバーといえば、永久の父ジャック、瞬、そして久遠、指折り数えて首を捻った。
(外を取り囲んでいるダンピールは誰も入ってきてない・・・・・・ってか、入れないから飛び出して行ったとは言わないもんね?)
飛び出していく人物を真琴が目撃したとすれば、1名だけ。
「あ、久遠さん?」
実家に帰らせていただきます、と言って出て行った。
「久遠、ちゃん?」
水島が口にした名を真琴が繰り返した。
(どうして『ちゃん』なの?)
久遠に少しだけジェラシー・・・・・・
(僕だけの・・・・・・『ちゃん』付けされるのは僕だけの特権なのに)
むむっと水島が唇を尖らせ、それに気付いた真琴はフッと笑みを浮かべた。
「あらあらぁ?水島ちゃん、ヤキモチ?」
水島の頬を両手で包み込んだまま、真琴はその唇にキスをした。
「真琴ちゃん?」
茹蛸のように真っ赤になった水島の頬を離さない。
「水島ちゃん、かぁわいっ!」
んちゅ~っと熱いベーゼを交わした。
(ところで真琴ちゃんの言う変な事って、どこら辺から変な事になるのかなぁ?)
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