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第50話
「えっと・・・・・・つまり・・・・・・」
大翔の手が再び永久の髪に触れた。
「そう言う事なんだけど」
記憶のない大翔は、吸血鬼としての能力も失っていた。
永久と再会した事で、大翔の力は徐々に戻り始め、記憶の扉も開き始めた。
大翔の気配を察知したダンピールや、血の十字架を狙う輩が襲い掛かってきたりもした。
「永久の中に血の十字架があったのは・・・・・・俺が永久に移したんだ」
大翔の中にあった血の十字架は既に破滅の魔女の力を失くし、ただの器となっていた。
「昔、永久と逃げてた時・・・・・・お前と一緒に死んだろ?」
あの頃の永久はダンピール、まだ吸血鬼として覚醒していなかった。
ダンピールは高確率で吸血鬼になるというが、それを確実にし、ずっと側にいられるようにと大翔が血の十字架に自分の血を注ぎ、永久へと移したのだ。
「待て・・・・・・俺・・・・・・お前が死んだの見届けた気がするんだけど?」
ぼんやりと思い出した記憶。
自分がダンピールだった事、そして、大翔を手に掛けたことがある・・・・・・事。
自分が死んだ後にそんな事を?
「だからぁ、永久はダンピール、俺は破滅の魔女の血を引く不死身の吸血鬼、だったっしょ?」
一緒にいたかったから。
「でも、俺お前より体力ある、ぜ?」
よっと勢いをつけて大翔の体の上に覆い被さる。
「なぁ、俺ずっと聞きたかったんだけど・・・・・・俺、勝手に血の十字架を・・・・・・永久に」
「別にいいんじゃね?俺はお前のもんなんだし、ずぅっと一緒にいられるって事だろ?」
軽い。
そんな軽くていいのか、永久!
「俺は大翔を護る力を手に入れたんだし、ずぅっと一緒にいられるわけだし、今大翔が俺の腕の中にいるわけだし」
ちゅっと顔を落として大翔の耳にキスをする。
「漸く俺ら元に戻ったわけじゃん?」
「・・・・・・元に戻ったって」
「そういうことだろ?」
そう耳元で囁くと、大翔の表情が一瞬で真っ赤に染まった。
「どろっどろに甘やかしてやっから」
「ちょぉっと待ちなさいぃ!」
バタンッ!
勢い良く開いた扉の向こう側に真琴がビシッとこちらを指差して仁王立ちし、その後ろに水島が控え、瞬が羨ましそうな視線を向け、ジャックが呆れた表情で最後尾に立っていた。
「チッ」
頭上で永久が舌打ちし、大翔はその腕の中で苦笑した。
そんな彼らの背後から、バタバタと足音が近づいてくる。
「ひひひっ、大翔くっ、ひろっ、とくん」
彼らを押し分け、乱れた髪もそのままに現れた久遠が部屋に足を踏み入れる。
「うちの、うっ、うちの姉消しちゃったって?」
肩が激しく上下する。
(あ、忘れてた)
永久の胸を押して大翔はその腕の中から抜け出した。
「あの、ごめっ」
やっぱり一応は謝ろうとしたのだが・・・・・・
「ありがとう!」
ひょっとしたら敵討ちをされるかとも思ったのだが・・・・・・
「へ?」
まさかの礼を言われて、ぽかんと固まる。
「うちの一族皆姉に手を焼いていてね、いやぁ、今回大翔くんが消しちゃったって言うじゃない?皆両手叩いて喜んでてね?」
久遠の表情は嬉々としている。
「ただ消しちゃっただけじゃなくって、完全消滅ぅ・・・・・・なんだけど」
大翔の背後でベッドに横たわったままの永久は、2度と復活しないんですけどぉと続けたいが黙っておく。
「久々に家帰ったら、皆パーティーしてるんだもん、五十年間ずっとだよ?」
呼んでって話だよねぇと、すぐ側の真琴に同意を求めた。
「あんたのテンションにはついていけないわ。実の姉が消滅したっていうのに・・・・・・パーティーって」
「そのお姉ちゃんがよっぽど酷い人だったんじゃない?」
「でも五十年よ?五十年もの間、ずっと喜びの宴って」
近づいてきた水島の腕の中に飛び込んで、久遠を退ける。
「おっとこうしてる場合じゃなかった。すぐ帰ってパーティーに合流しないと!」
じゃぁねっと久遠が踵を返した。
「え?」
嵐のように去っていった久遠を見送り、誰もがその場に立ち尽くす。
最初に我に返ったのは・・・・・・
「ひぃ~ろぉ~とぉ~」
永久が伸ばした腕の長さでは大翔に届かなかった。
「永久?」
こっち来いと手招かれて、素直に永久に駆け寄る大翔に、水島は腕の中の真琴を連れて部屋を出た。
ついでに、瞬とジャックも連れて部屋から離れていく。
(野次馬は退散っと)
ふふっと水島が笑う。
(2人とも仲良くね)
「お兄ちゃんがぁ、永久くんに盗られたぁ」
ぎゅっと抱きついてきた真琴を優しく受け止め、髪を撫でてあげる。
「そんなことないよ、真琴ちゃん。大翔くんは真琴ちゃんだけのお兄ちゃんなんだから。真琴ちゃんだって大翔くんに甘えたらいいよ」
でも今はダメだよ。
「今日ぐらいは永久くんに譲ってあげてね?その代わり僕が真琴ちゃんの言うこと何でも聞いてあげるから」
こっちでもイチャイチャ・・・・・・
部屋の中では兄達がイチャイチャ・・・・・・・・・ということは?
「パパ」
目の前を行く2人はくっついたまま、ラブラブ状態。
ピンクのオーラを身に纏い、真っ赤なハートを飛び散らかしている。
「なんだい、瞬?」
ガシガシとジャックは髪を掻き乱し、大きく口を開けて欠伸をした。
「パパ、一緒にラブラブするぅ?」
「ん~いやぁ、外で待ってるヤツがいるから」
拒否された。
そのまま、ジャックは窓枠に足を掛け、外へ飛び出した。
この屋敷を取り囲んでいるダンピールのリーダーの元へ飛んでいく。
ぽつん・・・・・・
「何?何なの?俺1人?」
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