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第57話

「天は僕を見捨てなかった」 ズーンと重い気分のまま、屋敷に帰ってきて、恐る恐る小テストを鞄の中から引っ張り出してみて、瞬は大きく目を見開いた。 昼休みに見たときは、きれいなバッテン印ばかりが並んでいたのに・・・・・・ リビングのテーブルの上で広げてみれば、今はマルばかり。 何度目を擦ってみても、頬をつねってみても・・・・・・痛くないけれどソコは気にしない。 目の前の答案用紙、それは幻覚じゃない!! 「神様は普段の僕の良い行いを評価してくれたんだね」 天を仰いで・・・・・・ 「ありがとう、神様!」 それが夢じゃない証拠に、次に帰ってきた水島は、瞬が小テストで百点を取ってきたことに驚いて、御祝いをしなきゃと買い物に飛び出して行き・・・・・・ 次に帰ってきた真琴は、瞬が百点を取った記念だと写真を撮り、リビングで一番目立つ場所に額入りで飾り・・・・・・ 更には今日のお祝いのために部屋の中の飾りつけを始めた。 「明日雨降ったり、槍が降ったり・・・・・・嵐になったり、地震が起こったり・・・・・・」 永久は失礼なことばかりを並べたけれど・・・・・・ 嬉しそうに笑いながら、瞬の髪をワシャワシャと掻き回して・・・・・・ 「よくやったぞ、瞬」 大翔はぎゅ~っと瞬を抱き締めた。 「さすが俺の瞬だ」 (大翔くん、いい匂いがするぅ・・・・・・俺の瞬って言った?) んふふふふっと傍から見れば気持ち悪いと言われそうな笑顔で、瞬は大翔に抱きついていた。 「さぁ、瞬、もう一度よぉっく俺に小テストの結果を見せてくれ」 「うん!」 意気揚々と、テーブルの上に広げたままになっていた小テストへと手を伸ばす。 その時だった。 バコーン!!!!!!! 「いった~い!!!!」 「そりゃあ思いっきり叩いたから痛いでしょうよ」 何かで額を思いっきり叩かれて瞬は飛び起きた。 目の前には、雑誌を丸めた久遠が立っている。 そして、今自分が置かれている状況は・・・・・・ 白い天井の下、白いベッドの上、そして、仕切られたカーテンに・・・・・・ 「ここ・・・・・・保健室?」 見慣れた保健室のおばさんが、にっこり笑って立っている。 「ここ、アカデミーの保健室?え?だったらどうして久遠ちゃんがいるの?」 首を捻る。 さっぱり意味が解らない。 「そりゃあ、瞬を迎えに来るようにって連絡があったからに決まってるでしょ」 (なんで?) なぜ瞬を迎えに行けと久遠に連絡が入ったのか? なぜ保健室で寝ていたのか? 「覚えてないの?」 呆れ顔の久遠が、一枚の紙を目の前に突き出した。 「あぁ!!!!!!」 そこにはバッテン印しかない小テストがあった。 久遠の手から慌てて奪って、ぐしゃっと握りつぶし、布団の中に押し込む。 「見たの?」 額に嫌な汗がぶわっと浮かんだ。 「コレ握り締めたまま、昼休みが終わっても起きず、先生が呼んでも起きないってんで、こりゃぁ寝てるって言うより気絶してるんだなってことで保健室に運ばれて、いやいや、でもどこか悪いのかもしれないってジャックの知り合いの医師を呼んで診てもらって・・・・・・恐らくはこの小テストが原因でしょうって言われて・・・・・・一番無難な僕に連絡がきたってことだよ」 早口で説明されても、しっかりと言葉を理解した。 「じゃぁ、さっきまでのはやっぱり夢だったのぉ?!」 「途中から気持ち悪い笑顔で気持ちよさそうに寝てたね。まぁ、だいたいどんな夢を見ていたのか想像できてるけど・・・・・・残念だったね」 ほら帰るよ、と瞬の腕を取り、ベッドから引き摺り下ろす。 ドテッと床に落ちても立ち直れない瞬は、そのまま久遠に引き摺られて廊下へ出た。 「ほら帰るよ」 瞬は握り締めたままの小テストを額に当てて念じ続ける。 (帰ったら百点・・・・・・次に開いたらマルばっかり・・・・・・大翔くんの超笑顔とハグ・・・・・・) 「瞬、いい加減諦めな」

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