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第12話 天谷雨喬の人間関係2p

 三人は、前に天谷、日下部、後ろに小宮と言う風に並んで歩きながらどうでもいい会話を話した。  もう少しで道を抜けるという時に、突然、小宮が後ろから両手で天谷の腰を掴んだ。  天谷は、ぎゃあ、と悲鳴を上げる。 「なにするんだよ、ばか。あほ、下の下っ! あっ、もうっ、変なとこ触んな! 変態! 変人っ!」  天谷の侮辱の声に、小宮は笑って、「いやぁ、相変わらず、天谷先生は細いなと思ってさ。ちゃんと飯食ってんの? ギュッとしたら折れちゃいそうじゃん?」そう言って、小宮は天谷を抱きしめた。  それを見た日下部の顔が引きつる。 「ぐうっわ! 苦しい! くっ、いやっ、嫌だぁ、離せっ!」  天谷は身をよじり、苦痛の顔でそう訴える。  小宮の金髪の髪と天谷の少し茶色い髪が混ざる。 「んー、天谷、髪、いい匂いだな。シャンプーなに使ってんの?」  小宮がサラサラの天谷の髪を撫でながら言う。 「いいだろ、なんだってっ……もっ、触んな、ウザい、やめろよ!」と小宮の腕の中で暴れる天谷。 「小宮、天谷を離せよ! ノロノロやってんな! 遅刻するだろ!」  日下部が天谷を自分の方へと引き寄せる。 「なんだよ、日下部の旦那、俺と天谷がいちゃついてるのが羨ましいのぉ? あ、嫉妬か?」 「あ? しっ、嫉妬とか、ないから! お前、ふざけるのもいい加減にしろ!」  慌てて言う日下部。 「へっ? 旦那、なんで顔赤くなってんのよ? 熱でもあんの? あ、つか、お前、その首の絆創膏、なんだよ?」 「何でもねーよ。小宮、黙れよ!」 「小宮も日下部もいい加減にしろよ! 学校、遅刻するだろ! 日下部、離せよ!」  天谷は、暖かい日下部の腕の中で叫んだ。  三人は走って大学へ向った。  大学の中庭。  大きく育った樹木に背を預けて、天谷は一人、小説を読んでいた。  この昼休憩中に天谷はここで、ずっと一人で小説を読んでいたが、しかし、天谷の頭には全く小説の内容が入ってこなかった。  理由は日下部についてのある出来事にあった。  天谷の大学では一年次に、必須科目以外に二つ、自由選択科目の講義を受けることができた。  天谷は自由選択科目である宗教学の講義を受けるために、一人、廊下を移動していた。 「なぁ、天谷」  不意に声をかけられた。  声の主は、天谷は名前を知らなかったが、たまに日下部と一緒にいる男子だった。  その男子と合わせて四人の男女に天谷は囲まれた。  全員、日下部と一緒にいるところを天谷は見たことがあったが、全員の名前を天谷は知らない。 「なに?」  天谷は笑いもせずに言った。 「天谷、お前さ、日下部のこと、なんか知ってる?」  始めに天谷に話しかけてきた男子が言う。 「なんか、噂になってるじゃない。気になっちゃってぇ」  ショートヘアーの女子が言う。 「噂ってなに?」  天谷が聞いた。 「いや、日下部のやつ、首に絆創膏、めちゃくちゃ貼ってるじゃん。アレ、キスマークを隠しているんじゃないかって、女子の間で噂になってるんよ。なんで絆創膏してるのか小宮は知らんって言ってるし、日下部本人ははぐらかすしさ。ウチらも気になっちゃって。天谷くんさ、日下部と仲良しじゃん、何か知らない?」  サラサラのロングヘアーの女子が言う。 「はぁ? キスマーク? 俺は狂犬に噛まれたって聞いたけど?」  天谷は唖然として答えた。 「ぶはっ! 狂犬! 日下部のやつ、決まりだな! あいつ、どんなプレイしてんだよぉ!」  唇にピアスをしたスキンヘッドの男子が笑う。 「ショック、私、日下部狙いだったのに。あいつ、彼女できたってこと?」  サラサラロングヘアーの女子が言う。 「遊びの女じゃねーの? 日下部、モテまくってるから女喰い放題だろ」  天谷に始めに話しかけてきた男子が言う。 「日下部はそんなやつと違うわよ。お前とは違うんだよ!」  ショートヘアーの女子が言う。 「そうよ、日下部はあんた達とは違うのよ!」  サラサラロングヘアーの女子が言う。 「お前ら、日下部の味方かよ!」    天谷はめまいを感じながら話を聞いていた。

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