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第43話 天谷、日下部、小宮の高校時代11p

「午前でこの混みよう、もしかしたら女装カフェは模擬店で一位になるかも知れないわね。おほほほっ! 笑いが止まらないわ!」  大満足の様子の委員長に小宮は半分呆れて苦笑いをした。  小宮は客の注文を取っている天谷の方に目を向ける。  天谷はロボットのようにぎこちない動きで接客をしていた。 「あの、えっと、アイスコーヒーと、えーっと、パ、パンケーキと……」  天谷の注文を確認する声は途切れ途切れで聞こえ辛いようで、客が逆に天谷に注文の確認をしている。  そんな天谷の姿に委員長が目を光らせる。 「あちゃー、あの人見知りが無けりゃ、天谷君は最高なんだけどな。一反仕切り直しますか。小宮!」  委員長は鋭い声で小宮を呼ぶ。 「何じゃらほい」 「天谷君と二人で看板持ちに行って来て! 看板は小宮が持つのよ!」  と委員長は小宮にびしりと人差し指を突き付けて指示を出す。  小宮はその指示に、「へいへい」と従った。 「おーい、天谷、看板持ち行くぞー」  小宮は天谷に手を振って呼びかける。  小宮のその呼びかけに、天谷はホッとしたような顔をして「今行く」と言った。  廊下の、二年六組の教室からは教壇側の入り口に当たる場所の横に机と椅子が出してあって、それが女装カフェの受付カウンターになっていた。  客はこの受付カウンターで券と交換して模擬店で食べ物を買ったり食事をしたりするのだ。  券は学生たちには無料で配られていて、外部の客は有料で買い求める。  天谷と小宮が教室を出ると受付には女子生徒が座っていた。  彼女は、二人の顔を見ると、にこやかに、「あ、小宮君、天谷君、看板持ち? 行ってらっしやい」と言った。 「うん、行ってくるぜ。客、バンバン呼んでくるからな」  小宮はブイサインをしながらそう言った。  そんな小宮の背中に天谷は隠れて何も言わずに俯いている。  小宮の姿に女子生徒はくすりと笑う。 「あり、天谷君、小宮君の陰に隠れちゃって、人見知りかいな、可愛い。小宮、どうやって天谷君を手なずけたのよ」  からかう女子生徒に小宮は、「ははっ、手なずけるってこいつは犬かよ」と楽しそうにツッコミを入れる。  女子生徒は小宮の台詞に笑った。  天谷の方は無反応だ。 「じゃあ、行って来るな。行くぞ、天谷」  気合を入れて言う小宮に、天谷は、「うん」と小さく答えた。  小宮が歩きだすと天谷は小宮の後に続く。  去っていく二人に向かって受付の女子生徒が「二人とも、交代の時間までには戻ってきてよねー!」と、大声で叫ぶ。  小宮は「分かってる」と、彼女に大きく手を振った。  歩きながら、小宮が天谷に話しかける。 「お前、すっかり人見知りキャラだな」  そう言う小宮に天谷はそっけなく、「そう?」 と答える。  小宮はため息を付く。 「お前って、色んな事に無自覚が過ぎるんでないんの? 気を付けた方がいいぞ」 「気を付けるって、何に?」  天谷は首を傾げる。  小宮は困った顔で「何にでもだよ」と答えた。  二人はぶらぶらと校内を歩いた。  一般の客も含め、校内は人で溢れている。  小宮と天谷はすれ違う人とぶつからないように注意した。  小宮は歩きながら教室で開かれている模擬店や展示、出し物を、ひょいと覗いた。  天谷は小宮の後ろについて小宮の背中ばかりを見ている。 「天谷、お前、何か気になる出し物とかあるん?」  訊かれて天谷は、「お化け屋敷」と即答した。  小宮は意外そうな顔をすると、「お前、そういうのが好きな訳?」と訊く。 「うん、好き」

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