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第44話 天谷、日下部、小宮の高校時代12p
少し笑顔を見せて言う天谷を横目に見て、小宮は、「じゃあ、休憩時間入ったら一緒に行くか」と何げなく言った。
しかし、その小宮の台詞に天谷は驚いた顔をする。
「え、お前、何なの、その顔。俺と一緒にお化け屋敷行くのが嫌なの?」
小宮が訊くと、天谷は困ったように、「いや、違くって。そういうの、誘われたの、初めてで。誰かと一緒に……とか無かったから、ビックリして」と、そう言って俯いた。
「は、お前、マジか。じゃあ去年の文化祭とかどうしていた訳?」
小宮の質問に、天谷が「一人でぼんやりしてた」と答えると、小宮はふぅーん、と言ってから「天谷って一人でいるのが好きな訳?」と聞いた。
「うん、好きだよ」
大して感がえることもせずに天谷は答える。
「お一人様ってやつか。ああ、もしかして、今日の文化祭の休憩時間も独りでぼんやりの予定だった?」
「うん、お化け屋敷は興味はあるけど……」
「そか。お化け屋敷、無理には誘わないけど、行きたかったら言えよな」
「うん」
「さてと、看板持ちの任務頑張るとしようぜ」
小宮は看板を持つ手に力を込めると「女装カフェいかがっすかー」と声を張り上げた。
天谷は顔を上げて、「いかかですかー」と、小さく声えを出しながら小宮の後ろに続いた。
二人は校舎の二階、三階を回り、一階へ降りた。
一階を巡り、小宮と天谷は体育館への渡り廊下まで来て立ち止まった。
ここまで来て、天谷には若干疲れが見えていたが、小宮は元気そのものだった。
「さぁて、どうしようかな。校舎は回っちまったし、外の方まで行くか? どうする、天谷」
そう言って小宮は手にしている看板を持ち手を軸にしてクルクル回す。
看板には、ピンク色のポスターカラーで女装カフェと言う文字とハートのマークが書かれている。
小宮が回している看板を見ていると天谷は目がチカチカした。
「えーっと、俺は、どっちでも……」
曖昧な答えを天谷が言おうとした、その時……
「おーい、小宮!」
小宮を呼ぶ声に二人は反応する。
女装した男子生徒が二人の方へ小走りに駆けて来た。
二人のクラスメイトだ。
彼は二人の前で立ち止まる。
彼の息は弾んでいた。
「こんな所にいたのかよ。看板持ち、交代の時間なのに二人が戻って来ないから探しに来たんだぜ。俺が代わるから、二人とも、このまま休憩入っていいぞ」
彼がそう言うと小宮は嬉しそうな顔を作った。
「マジか、悪い、じゃあ、頼むわ」
小宮は片手で彼を拝み、彼に看板を渡す。
彼は看板を受け取ると、「じゃあな」と言って去って行った。
「天谷、休憩だって」
テンション高めに言う小宮に天谷は、「うん」
と一言返す。
「えーっと、どうする?」
「え、どうって」
「だから、お化け屋敷。俺と休憩、一緒する?」
「え、ええっ? ああ、えっと」
天谷は言葉を詰まらせると小宮から視線を外して自分の上履きのつま先を見た。
明らかに困った様子の天谷の姿に小宮はため息を吐く。
(はぁ、まだ全然なついてないっての)
小宮は脳裏に浮かんだ受付の女子生徒に向かって一言物申したい気持ちに駆られた。
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