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第47話 天谷、日下部、小宮の高校時代15p
小宮が戻ると、体育館の渡り廊下には天谷の姿は無かった。
(ふぅ、これが天谷の答えって訳かい。寂しいことしやがるな。ま、仕方ないか)
小宮は笑うとスマートフォンでグループチャットを開く。
(休憩時間は誰かほかのヤツでも誘いますか。えーっと、休憩時間、入ってるヤツはーっと、日下部辺りはどうかいな)
小宮がスマートフォンの画面を睨んでいると、体育館から出て来た男子生徒二人組が小宮に声をかけた。
彼らは小宮のクラスメイトだった。
「よう、小宮、その格好で休憩か?」
小宮のセーラー服姿を見て陽気にそう言うクラスメイトに、小宮は、「そうよん、お前らは女装を免れて良かったな」と言って、セーラー服のリボンを引っ張り、ウィンクをした。
「げげっ、小宮、止めてくれよ」
「本当、女装が似合わねーなぁ、小宮は」
二人に言われて小宮は肩を落とし「言うなよぅ、わりと傷付くから」と言う。
そう言いながらも小宮の顔は笑っている。
そんな小宮を見てクラスメイト達も笑顔になる。
「同じ女装でも天谷は一味も二味も違うよな、何せさっきもナンパされてたくらいに女装がハマってるもんな」
笑ってそう言うクラスメイトの台詞に小宮は眉をひそめた。
「ナンパ? それ、どういうこと?」
小宮に聞かれてクラスメイトの一人が可笑しそうに「天谷のやつ、いかにもチャラそうな男二人にナンパされてたんだぜ。一緒に文化祭回ろうって、しつこく誘われてたんだ。あいつら、天谷が男とは気付かなかったんだろうな」そう言った。
「お前ら、それ、黙って見過ごした訳?」
小宮は険しい顔をする。
「何だよ、小宮、怖い顔して。だって、助ける必要あるか? 天谷が自分で何とかしたろ。あのナンパ男達もじきに天谷が男だってことに気付くだろうし……」
「ばか! お前らが薄情なのは良くわかったぜ。天谷を見かけたら俺に連絡しろよな!」
そう言って小宮は啞然としているクラスメイトを一瞥すると歩き出した。
(くそ、バカは俺の方だよ。あの格好の天谷を一人にするなんて迂闊だったぜ)
小宮は素早くスマートフォンを操作する。
グループチャットのメンバーから彼の友人、日下部光平の名前を選ぶと小宮は日下部へのメッセージを打った。
『日下部、暇か? なら頼みがある……』
日下部光平は二年一組の教室の前で、出し物であるお化け屋敷の受付係として忙しく働いていた。
「日下部、もうちょいで休憩時間だから頑張ろうね」
一緒に受付係りを務めている女子生徒、三枝が笑顔を浮かべて日下部に言う。
「ああ、そうだな」
日下部は笑って頷く。
「ねぇ、日下部、休憩時間さ、誰かと一緒に行動する約束してる?」
三枝がそう言うと、日下部は「別に」と答えた。
「じ、じゃあさ、良かったら私と……」
「あ、ごめん、三枝、待って。スマホ、グループチャットに連絡入ってるわ」
日下部は三枝の話を遮り、スマートフォンの画面を見る。
話を中断された三枝は日下部の隣で頬を膨らませてご機嫌斜めだ。
「あ、小宮からだ」
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