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第48話 天谷、日下部、小宮の高校時代16p
日下部が小宮の名前を口に出すと、小宮と知り合いである三枝は「小宮から? 何だって?」と日下部のスマートフォンを覗き込んだ。
「止せよ、プライバシーの侵害だぞ」
日下部はやんわりとそう言って三枝に背を向けて三枝からスマートフォンが見えないようにして小宮からのチャットを確認した。
『日下部、暇か? 暇なら頼みがある。コイツを探して欲しいんだけど』
メッセージを読んだ日下部はチャットに添付されている写真を見た。
写真には紺色のセーラー服を着た、髪の長い少女が写っている。
日下部はその少女の顔を見て息を止めた。
それは、彼女が美しい少女であった為では無い。
彼女の写真を見て、日下部の脳裏に、日下部の知る一人の少女の顔と名前が浮かんだからだった。
永遠に中学生であるその少女は日下部の頭の中で微笑を浮かべていた。
写真の少女は日下部の知る少女にどこか似ていたのだ。
『この子は誰だ』
日下部は小宮に素早くメッセージを送る。
少しして、小宮から返信のメッセージが届く。
『俺のカのカノジョ笑。いなくなって困ってる。探すの手伝って』
日下部は、「ふぅん」と言うとスマートフォンを軽快にタップしてメッセージの返信をする。
『マジか。お前に彼女が出来たとは知らんかったな。了解! もう直ぐ休憩入るから任せろ!』
小宮から直ぐに返信が来る。
『サンキュー。頼んだわ』
日下部は少し考えてから小宮にメッセージを送った。
『小宮、お前、今どこにいるんだ?』
『東校舎』
『そか、じゃあ、俺は今いる南校舎の方から探すわ』
『手分けって訳か、了解! ヨロシクな!』
『はいよ!』
日下部がスマートフォンから顔を上げると、教室から出て来た男子生徒が「日下部、三枝、休憩入って良いぜ」と日下部と三枝に告げた。
三枝は、やったぁ、と声を上げて喜んで、上目遣いに日下部を見て、「ね、ねぇ、日下部、休憩時間、良かったら一緒しようよ」と、途切れ途切れの声で頬を赤らめて言った。
勇気を出したであろう三枝の誘いに日下部は一瞬返答に迷ったが、「あー、悪い、三枝、俺、野暮用があって無理だわ」とバツが悪そうにして断った。
三枝は明らかにショックを受けた顔をしたが、直ぐに笑顔を作って、「そか、じゃあ仕方ないね」と乾いた笑い声を上げる。
「ほんと悪いな、三枝。……あ、そうだ、三枝、お願いがあるんだけど、この子見かけたら俺に連絡してくれないかな」
日下部は小宮から送られて来たチャットに添付された少女の写真を三枝に見せた。
「え、この子、何なの?」
三枝はギラついた目をして日下部を睨む。
「小宮の彼女らしい。小宮とはぐれたみたいで、小宮が探してる。俺もこれからこの子探すんだよ」
日下部の話を聞いた三枝はホッとした顔をした。
「何だ、小宮の彼女か。野暮用ってそういうこと。了! この子見かけたら日下部に連絡するよ」
「サンキュー三枝。出来れば足止めしといてくれれば助かるぜ」
「了!」
「じゃあ、俺、行ってくるわ。三枝、後でな」
日下部が立ち上がると三枝も立ち上がり、「あっ、その子の写真、私にも送ってよ」と、立ち去ろうとする日下部の制服の裾を掴んで言った。
「あ、そうだな」
日下部は三枝のスマートフォンに少女の写真を送ると三枝と別れた。
日下部は人込みを目を細めて見回す。
写真の少女の姿は見えない。
(やれやれだぜ。探すにしても心当たりも無いし、とりあえずその辺をまわってみますか)
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