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第96話 たまには恋人らしく3p
鈍感な天谷は全く分かっていない風だ。
日下部はため息を一つついて「だーかーらーっ、お前は俺と付き合って何かやりたい事とか無い訳って訊いてんの!」と、天谷のおでこを指で弾いた。
「痛い!」と、天谷は悲鳴を上げる。
それから天谷は日下部を恨めしそうに見た。
「日下部とやりたい事? そんな急に言われても……て言うか、日下部の方こそ、何か無いの? 俺とやりたい事」
逆に訊き返す天谷。
日下部は「まぁ、あの高校生が言ってた様な事くらいはしたいとは思ってるよ」と答える。
「えっ、それって、えーっと、デートとか……キスとかアレコレってヤツ?」
少し恥ずかしそうに天谷は言う。
「うん、そう」
はっきりと答える日下部。
「っつ、デートに、きっ、キス……俺と日下部が?」
「そ、ダメ?」
「ダメって言われても……そんなっ」
天谷は頬を赤く染めた。
「日下部がそんな事考えてたなんて知らなかった……」
天谷が下を向く。
日下部はそんな天谷を見ながら「付き合ってたら普通に考えるだろ」と言う。
日下部の台詞に、天谷は下を向いたまま何も言わない。
「……俺達、キスもデートもダメそうだな」
日下部は苦笑いした。
天谷は慌てて顔を上げて「そ、そんな事言ってないけど、いきなり、何か恥ずかしくて」
と、拳を握りしめる。
「じゃあ、何なら恥ずかしくないんだよ」
「えっ、何ならって」
「何かあるだろ、俺としたい事。高校生だって思いつくんだぜ」
「それは、彼女としたい事だろ。膝枕とか、えーっと、何やらとか。俺は日下部の彼女じゃ無いし」
「そんなのお前」
そんな様なものだろ、と日下部は天谷の耳元で甘く囁いた。
天谷は日下部からサッと離れると耳を押さえる。
「もっ、何するんだよ、バカ!」
「ククッお前、耳まで真っ赤。可愛いトコあんじゃねーか」
心底可笑しそうに日下部は笑う。
そんな日下部を天谷は赤い顔をして睨みつける。
「そんな顔すんなよ。で、何か無いの? 俺としたい事?」
天谷は「うーん」と唸り声を上げて考える。
「あっ、そうだ。あの高校生が言ってたアレコレのコレって何なんだ?」
手を打ち天谷は日下部に訊く。
日下部はポカンとした顔をする。
「はっ?」
「いや、アレが膝枕じゃん。コレがもしかしたら日下部としたい事に繋がる事かも知れないじゃん!」
さも良いアイディアだと言わんばかりの天谷に日下部は呆れ顔だった。
「お前、あいつらの話聞いてたか? あの話の流れでいったら、あいつらの言うコレってセックスの事じゃん」
「えっ!」
天谷の表情が固まる。
「キスもデートも無理なんだろ。そんなお前が俺と、だなんて、それこそ考えられねーだろ」
真顔で言う日下部。
「そっ、そんな事言われても……」
天谷はシュンと落ち込んだようだった。
しかし、落ち込んでいるのは日下部も同じで、これだけ聞いても天谷から答えが出て来ない事に日下部はへこんでいた。
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